ロシアによるウクライナ侵攻で半導体に「新たな危機」Supply Chain Dive

携帯電話や自動車、家電製品など半導体を搭載する製品は増える一方だ。半導体不足が世界中で深刻化する中、ロシアによるウクライナ侵攻が新たな危機をもたらしている。

» 2022年05月02日 07時00分 公開
[Colin CampbellSupply Chain Dive]

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Supply Chain Dive

 「半導体業界におけるサプライチェーンの問題は、主要な原材料サプライヤーの混乱とロシアによるウクライナ侵攻により、悪化する可能性がある」と専門家は警告する。

 半導体製造プロセスに不可欠な冷却剤の世界供給の80%を担う化学・電気素材メーカーである3Mのベルギー工場が2022年3月に一部操業を停止した。サプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェアを提供するResilincによれば、Samsung Electronicsなどの大手電子製品メーカーや、IntelやTaiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)といった大手半導体メーカーが冷却材の供給を同工場に依存しているという。

 ウクライナの戦争は半導体製造に不可欠な化学物質であるネオンとアルゴンの製造にも支障をきたしている。電子部品の販売代理店であるAvnet Silicaのトーマス・フォジ氏(EMEA垂直市場担当ディレクター)(注1)は、「次の四半期から数年は半導体業界に大きな影響が出るだろう」と述べる。

(注1)EMEAとはEurope、the Middle East、Africaの頭文字をとった略語で、ヨーロッパと中東、アフリカを指す。

「供給の70%が危険にさらされている」

 ベルギーの雑誌『Brussels Times』は「2018年にベルギーのザインドレヒトにある3Mの工場近くの地中から、人や動物の健康に有害な化学物質ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)が大量に発見された」と報じた(注2)。3Mは2022年3月、ベルギーのフランドル地方の環境当局から有害化学物質の排出停止を求められ、工場の一部操業停止を余儀なくされた。

 同社は1億5000万ユーロ(約206億5500万円)を投じて同工場で排ガス、水処理および化学物質の廃棄に関する新たな環境管理を実施すると約束した(注3)。

 同社CFO(最高財務責任者)のモニッシュ・パトラワラ氏は、2022年3月に開催された「J.P. Morgan Industrials Brokers Conference」で次のように述べた(注4)。「当社は当局による(有害物質の)排出停止命令を理解し、新しい基準に準拠すべく政府と協力して作業を進めている。最高のエンジニアが任務に当たっている」

 需要への対応やサプライチェーンの(逼迫〈ひっぱく〉や混乱による)苦境に悩まされる半導体業界にとって、3Mの工場の混乱は新たな苦しみとなった。ウクライナの戦争は、半導体のサプライチェーンに新たな混乱を引き起こした。

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