自治体DXの不都合な真実 自治体向けソリューションの市場規模「2026年に大幅縮小」のなぜアナリストの“眼”で世界をのぞく

矢野経済研究所によると、自治体向けソリューションの市場規模は2026年度には大幅に縮小するという。デジタル庁が「自治体DX」の大号令を掛けているにもかかわらず、なぜ縮小するのか。

» 2022年08月26日 09時00分 公開
[小林明子矢野経済研究所]

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この連載について

目まぐるしく動くIT業界。その中でどのテクノロジーが今後伸びるのか、同業他社はどのようなIT戦略を採っているのか。「実際のところ」にたどり着くのは容易ではありません。この連載はアナリストとしてIT業界と周辺の動向をフラットに見つめる矢野経済研究所 小林明子氏(主席研究員)が、調査結果を深堀りするとともに、一次情報からインサイト(洞察)を導き出す“道のり”を明らかにします。

筆者紹介:小林明子(矢野経済研究所 主席研究員)

2007年矢野経済研究所入社。IT専門のアナリストとして調査、コンサルテーション、マーケティング支援、情報発信を行う。担当領域はDXやエンタープライズアプリケーション、政府・公共系ソリューション、海外IT動向。第三次AIブームの初期にAI調査レポートを企画・発刊するなど、新テクノロジー分野の研究も得意とする。



 2021年9月に発足したデジタル庁は行政のデジタル化を推進している。「自治体DX」は行政のデジタル化における重要なテーマの一つであり、市場は大きく動いている。行政が語る「自治体DX」は、ビジネス変革を目指すようなDX(デジタルトランスフォーメーション)とは異なり、ペーパーレス化やRPA導入による自動化、システムの標準化などやBPRなどデジタイゼーション、デジタライゼーションの領域での取り組みが中心となっている。

自治体向けソリューション市場「34.2%減」の理由は?

 まず、矢野経済研究所が発表した自治体向けソリューション市場規模推移を予想した図をご覧いただきたい(2023年1月にデータ更新した図はこちらの記事で確認できる)。自治体向けソリューション市場の規模は、自治体にシステムやサービスを提供する事業者の売上高から推計している。

 2023〜2025年度は前年度比10%前後で好調に成長した後、2026年度には前年度比34.2%減と大きく減少すると予測した。このように急激に市場が縮小する理由は「自治体DX」が政策として推進されていることにある。ITベンダーの観点から見ると、次に述べる理由で自治体向けソリューションは数年先に売り上げが大きく下がる。

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