米国小売業界で“高リスク企業”増加中 損失を抱えるかつての「ユニコーン」が生き残る条件は?Retail Dive

2021年の好景気によって経営リスクを抱える企業の実態が覆い隠されたが、2022年に入って小売企業の経営事情は軒並み悪化している。Eコマースも例外ではなく、かつての「ユニコーン」も多額の損失を出す中、先行き不透明な状況を耐え抜く企業の条件とは。

» 2022年09月15日 11時30分 公開
[Ben UnglesbeeRetail Dive]

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Retail Dive

 過去12カ月ほど、米国の小売業界はさまざまな紆余曲折や課題を抱えてきた。市場は好調な売上と利益、サプライチェーンのボトルネック、記録的なインフレを経験した。その後、消費者の需要と売上は急速に下降した。

 2020年以降、小売業の倒産と広範囲にわたる苦境はあまり見られなくなった。

 (今回の状況も)新しい環境で変わるのだろうか。(消費者が自由に使える)裁量的な支出は制限され、金利は上昇し、膨れ上がった運営コストに利益は圧迫されたままだ。

「誰も何も学ばなかった」 膨れ上がる高リスク企業の数が示すもの

 Retail Diveに提供された金融サービスを提供しているS&P Global Market Intelligence(以下、S&P)のデータによれば、上場している小売企業のこの1年間における債務不履行率は、2022年8月15日時点で3.9%だった。この指標は、主に株価の変動や負債総額、国や産業に関連するリスクなどを基に市場のシグナルをチェックするものだ。

 2022年8月のデフォルト率は、小売業(の債務不履行率)がピークに達した2022年5〜6月の4.3%から低下した。しかし、S&Pのデータによれば、2022年8月半ばの3.9%は2022年12月の1.9%の2倍以上、2022年1月の2.1%のほぼ2倍になる。

米国の小売業界の年間債務不履行率(S&Pのデータを基にRetail Diveのベン・アングスビー氏が作成)(出典:Retail Dive) 米国の小売業界の年間債務不履行率(S&Pのデータを基にRetail Diveのベン・アングスビー氏が作成)(出典:Retail Dive)

 もう一つの指標である信用調査機関のCreditRiskMonitorが独自に評価する「Friskスコア」は取引変動率や財務指標、同社のプラットフォームの内部データを用いて、企業が1年以内に破産申請する確率を算出する。この数値は2021年以降、債務不履行の可能性が増加していることをS&Pのデータと同様に示している。

 CreditRiskMonitorのデータによると、現在、小売企業8社のFriskスコアは「1」だ。これは、それらの企業が9.99〜50%の確率で破産申請することを示している。さらに別の9社のスコアは「2」で、(破産申請する可能性が)4〜9.99%の確率であることを示している。2021年10月には、「1」または「2」のスコアを持つ小売業者は全体でわずか3社だった。

 CreditRiskMonitorが「高リスク企業」、あるいは「レッドゾーン企業」と分類しているのは、1年間の倒産リスクが0.87〜50%の範囲にあるFRISKスコアの企業だ。2022年に入ってからその企業の数は着実に増加している。CreditRiskMonitorがRetail Diveに共有したデータによると、「高リスク企業」や「レッドゾーン企業」の範囲にある小売企業の数は、2022年1月の72社から2022年5月は105社、2022年9月は121社に増加している。この数は、COVID-19による(パンデミックの影響が大きかった)2020年3月の最高値とほぼ等しくなっている。

好景気の後にやってきた「苦難」の時期

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