パブリッククラウドを提供していないデルが、「マルチクラウド」戦略を説く理由Weekly Memo(1/2 ページ)

企業が「イノベーション」を起こすためには何が必要なのか。デルはその要件として「マルチクラウド戦略」を強調する。パブリッククラウドサービスを提供していない同社がなぜマルチクラウドを説くのか。CEOをはじめとする経営幹部の発言から読み解く。

» 2022年10月17日 12時30分 公開
[松岡功ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 「私たちの使命は、人間のインスピレーションと技術革新を原動力とし、皆さんと共により良い未来を築いていくことだ」

 米Dell Technologies(以下、Dell)のマイケル・デル氏(会長兼CEO)は、同社の日本法人デル・テクノロジーズ(以下、デル)が2022年10月14日に都内ホテルで開催した自社イベント「Dell Technologies Forum 2022−Japan」の基調講演に寄せたビデオメッセージでこう強調した。同イベントのテーマは「Discover the endless possibilities for innovation」。「イノベーション」がキーワードだ。デル氏の冒頭のメッセージは、イノベーションを「人間のインスピレーションと技術革新」によって起こしていこうと読み取れる。

ビデオメッセージを寄せたDellのマイケル・デル氏(会長兼CEO)

DXでイノベーションを起こすための3つの要件

 企業にとって次なる成長に向けたビジネスのイノベーションが急務となっている。そのために多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる。ただ、イノベーションを起こすのが難しいことは誰もが知っている。そこで、イノベーションを起こす可能性をどのように追求していくか。デルが同イベントで説いていたそのための要件から、筆者が注目した内容をピックアップし、考察したい。

 続いて登場したDellのアンガス・ヘガティー氏(インターナショナル マーケット プレジデント)は、「人とテクノロジーが交差する場所で飛躍的なイノベーションが起きる。とりわけ、DXの取り組みは人を中心に据えることが何より重要だ。なぜならば、人こそがイノベーションを生み出すクリエイティビティの源泉だからだ」と訴えた。「クリエイティビティ」という言葉は、デル氏が使った「インスピレーション」と結び付いていると筆者は感じた。

Dellのアンガス・ヘガティー氏(インターナショナル マーケット プレジデント)

 「DXの取り組みは人を中心に据えることが何より重要」と語ったヘガティー氏は、イノベーションを起こす社員を支援し、その能力を高めていくために、企業は次の3つの要件に注力する必要があると説いた。

 1つ目は「コネクティビティ」(接続環境)だ。「仕事で求められるのは成果であって場所が問われるべきではない。従って、一貫したセキュアなエクスペリエンスを社員に提供することが肝要だ。まずは場所を問わず成果を出せるような環境を提供すべきである」

 2つ目は「プロダクティビティ」(生産性)だ。「テクノロジーに任せられるところは大胆に任せ、人は得意分野に集中できるようにすることで生産性を一層高めていく。企業はそうした環境を提供することによって、社員の満足度を高める努力をすべきである」

 3つ目は「エンパシー」(共感)だ。「人に対する共感という意味だ。企業は共感力のあるリーダーによるモデリングを通じて、社員を創造性と価値の最大の源として扱う文化を確立すべきである」

 上記の説明は全てヘガティー氏の発言のエッセンスだ。図1も併せて参照いただきたい。3つの要件の中で、筆者が注目したのは「共感」だ。企業文化に通じる話である。やはり、イノベーションには欠かせない要件なのだろう。

図1 企業がイノベーションを起こす社員を支援するための3つの要件(出典:「Dell Technologies Forum 2022−Japan」の基調講演資料)
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ