中小企業向けソリューション、ITベンダートップ3は? ノークリサーチ調査で判明

中堅・中小企業がIT商材やソリューションの委託先・購入先として選ぶITベンダーはどこか。1300社のユーザー企業を対象にしたノークリサーチの調査から、IT商材やソリューションの販売チャネル動向が明らかになった。

» 2022年11月04日 07時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 ノークリサーチは2022年10月31日、中堅・中小企業がIT商材やソリューションの委託先や購入先として選ぶIT企業(販社やSIer)に関する調査結果を発表した。

販社やSIerのシェアに明暗

 中堅・中小企業はどの販社やSIerから、何のIT商材やソリューションをどの程度の金額で導入・購入しているのか。

 それを探るため、ノークリサーチは年商500億円未満の国内企業1300社(全業種)を対象にIT商材やソリューション計5カテゴリー25項目(DXデジタルトランスフォーメーション関連や業務アプリケーション、ハードウェア、クラウドサービスなど)とそれらの委託先や購入先60社以上について社数シェアや支出額、IT市場規模などを調査分析し、「2022年版中堅・中小企業のIT支出と業務システム購入先の実態レポート」としてまとめた。

 調査の実施時期は2022年7〜8月で、調査対象とした販社やSIerは図の通りだ。

調査対象とした販社やSIerの一覧。※付きは、「主要なIT商材/ソリューションの委託先/購入先」の上位21社に挙がった販社やSIer(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 同レポートから、調査対象の中堅・中小企業全体におけるIT商材やソリューションの委託先/購入先の社数シェアは、独立系と複合機系が上昇、ベンダー系列が横ばいまたは下降傾向にあることが分かった。

 以下のグラフは、「主要なIT商材/ソリューションの委託先/購入先」(複数回答可)を集計した結果のうち、社数シェア上位24社を抜粋したものだ。

主要なIT商材/ソリューションの委託先や購入先(複数回答可)のうち、社数シェア上位24社の抜粋(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 右側に掲載した数表はグラフから幾つかの販社やSIerを抜粋し、2022年と2021年の社数シェアと順位を比較したものだ。独立系の大塚商会やオービック、ミロク情報サービスはおおむね順位を上げている。

 複合機系のリコー(系列企業も含む)や富士フイルムビジネスイノベーションもクラウドサービス展開の取り組みなどを通じて順位を上げている。

 一方で、ベンダー系列のNECネクサソリューションズや富士通Japan、日立システムズは横ばいもしくは下降となっている。

 ノークリサーチは「ベンダー系列の強みを生かしながら中堅・中小企業向けのIT商材やソリューションを展開できるかどうかが今後の焦点になる」と分析する。

複合機は幅広い企業層でアナログとデジタルを結ぶプラットフォームに

 中堅・中小企業における委託先や購入先の社数シェアについては、ユーザー企業の規模による違いを把握することも重要だ。以下のグラフは「主要なIT商材やソリューションの委託先/購入先」(直近3年間の累計金額が最も高かったもの、単一回答)を年商別に集計した結果から、複合機系3社とベンダー系列3社を抜粋したものだ。

中堅・中小企業の企業規模別に見た、主要なIT商材やソリューションの委託先や購入先(直近3年間の累計金額が最も高かったもの、単一回答)の上位3社。左は複合機系、右はベンダー系列の販社やSIerの場合(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 幾つか例外はあるものの、複合機系とベンダー系列は概して逆の傾向を示していることが分かる。複合機系の販社やSIerは、幅広い企業に複合機というプラットフォームを導入済みであることが大きな強みだ。複合機は「紙」というアナログ媒体とクラウドを含むデジタル処理を結び付けるインタフェースでもある。ノークリサーチは「販社やSIerが幅広い企業にIT商材やソリューションを訴求する際は、複合機系の販社やSIerとの協業を検討する価値がある」と述べる。

 一方、ベンダー系列の販社やSIerは、商材や人材の面では親会社である大手ベンダーの影響を受けることもあり、独立系の販社やSIerのように中堅・中小企業に特化した施策を打ちづらいという悩みを抱えている。

 「ベンダー系列の販社やSIerは、パッケージ開発企業(ISV)や中小規模のクラウド事業者との協業などを通じて、中堅・中小企業向けのIT商材やソリューションを効率的に構築・提供する取り組みが今後も重要になる」とノークリサーチは分析する。

得意な業種の強化が「プライム率」改善の第一歩になる

 IT商材やソリューションの販社やSIerにとっては、自社が顧客企業の主要な販社やSIerである割合、つまり「プライム率」は重要指標となる。

 以下のグラフは、今回の調査結果から、独立系、複合機系、ベンダー系列の主要な販社やSIerのプライム率を算出した結果だ。

独立系(左)、複合機系(右上)、ベンダー系列(右下)の販社やSIerのプライム率(出典:ノークリサーチ)

 独立系の大塚商会やオービックは、社数シェアとプライム率の双方で高い値を示している。一方、社数シェアは24位であるものの、プライム率が高いJBCCホールディングスのようなケースもある。「プライム率の改善を考える販社やSIerにとっては、JBCCホールディングスの取り組みは参考になる」とノークリサーチは説明する。

 複合機系ではリコー(系列企業を含む)、ベンダー系列では富士通Japanのプライム率が比較的高い値を示している。

 プライム率の高い販社やSIerと低い販社やSIerの違いは何か。「プライム率を高めるには、ユーザー企業が求める幅広いIT商材やソリューションを網羅することが最も有効な手段だ」とノークリサーチは指摘する。ただし、それを実践するには多くの労力と長い期間を要する。プライム率を改善するために有効で実践しやすい取り組みがあれば、多くの販社やSIerにとって有益な指針となる。

 そのヒントになるのが、主要なIT商材やソリューションの委託先や購入先を顧客企業の業種構成別で示した以下のグラフだ。プライム率の高い販社やSIer3社と、主要なIT商材やソリューションの委託先や購入先の上位21社の平均を比較した。

主要なIT商材やソリューションの委託先や購入先の業種構成比較。プライム率の高い販社やSIer3社と、主要なIT商材やソリューションの委託先や購入先の上位21社の平均を比較(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 上位21社の平均では各業種はほぼ均等となっているが、プライム率の高い販社やSIerは強みのある業種を抱えていることが分かる。

 「販社やSIerが自社のプライム率を改善したい場合は、自社の顧客の中で比較的多い業種は何かを確認し、まずはその業種におけるIT活用の中核を担えるようにIT商材やソリューションを強化することが有効だ」とノークリサーチは指摘する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ