日本IBMが提唱する「DX第二章」と「IBM Cloud」の取り組み(2/2 ページ)

» 2022年12月13日 08時00分 公開
[斎藤公二ITmedia]
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IBM Cloud採用企業の狙いは

 こうした強みを評価して、IBM Cloudを活用する企業が増えている。ある流通関連企業は、「IBM Cloudがシビアな非機能要件を満たし、基幹システムに最適なインフラを実現している」として、標準クラウドをIBM Cloudに切り替えた。

 ある製造関連企業は、コネクティッドカーのインフラをIBM CloudとRed Hat OpenShift、「IBM Cloud Pak for Data」などを活用して構築した。事業展開において、グローバルレベルでインフラを構築できることが理由だったようだ。

 今野氏は「この他にも公共事業の顧客や保険会社、電力、重工業などがIBM Cloudを高く評価している」と話す。

 「SaaSやPaaSを含めてさまざまなクラウドベンダーがある中で、IBM Cloudはユーザーのミッションクリティカルにフォーカスしています」(今野氏)

図4 IBM Cloud採用事例(出典:日本IBM提供資料)

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の狙いは

東 智之氏

 IBM Cloudと連携する自社クラウドサービスで、顧客のハイブリッド戦略を支援しているのがCTCだ。CTCの東 智之氏(ITサービス事業グループ エントラステッドクラウド技術事業部事業部長)は同社の取り組みについて以下のように話した。

 「CTCは複雑化する企業のハイブリッドクラウド環境に対して、オープンでシンプルかつセキュアな基盤を構築するために『OneCUVIC』ブランドで取り組みを推進しており、これを日本IBMと共同でグローバルワイドに展開することを発表しました。協業の背景には、共創やミッションクリティカルに対する考え方など、日本IBMの戦略とCTCのグローバルビジョンの整合性の高さが関係しています。CTCはユーザーの基盤を支えるフェーズから、DX関連の先進的なサービスの構築、実装、運用に至るまで、サービスの内容を拡充させています。日本IBMが持つ力とCTCが持つ知見を生かしてグローバルで展開する企業を支援します」(東氏)

 同氏はオープンなハイブリッドクラウド戦略や共創を推進するためのポイントにコミュニティー活動を挙げ、「コンテナ共創センターの公式参加企業は62社、コミュニティー会員が1063人、技術ブログへの総アクセス数1万2723件と活気があります」と話した。

図5 コンテナ共創センターにおける2022年の活動ハイライト(出典:日本IBM提供資料)

IBM Cloud最新アップデート

 説明会では、IBM Cloud最新アップデートとして「サステナビリティ」「業界向けクラウド」「ミッションクリティカルを支える品質の改善」「マルチプラットフォーム」についての取り組みも紹介された。

 サステナビリティとしてIBMはデータセンターへの投資を行っており、2025年までに脱炭素の75%削減の達成を目指すなど、さまざまな取り組みを進めている。

図6 IBM Cloudのデータセンター戦略と環境への取り組み(出典:日本IBM提供資料)

 また、企業間共創によって社会課題の解決を目指す取り組みとして、三菱重工と取り組むCO2流通の可視化プラットフォーム「CO2NNEX」や、三井化学と推進するブロックチェーン技術で資源循環プラットフォームの構築プロジェクト、旭化成と進めるプラスチック資源循環プラットフォーム「BLUE Plastics」などを紹介した。

 日本IBMは、規制が厳しい業界に向けたクラウドとして、ソブリンクラウドに対するIBM Cloudの機能拡充を発表した。一般的なソブリンクラウドでは、ユーザーが権限を持ち自国でデータを管理、保存し、利用するが、IBM Cloudでは分散クラウド管理の「IBM Cloud Satellite」や、監視サービスの「IBM Cloud Monitoring」、自国内でサーバの物理専有が可能な「ベアメタルサーバ」などを提供することで、ユーザー側の業務を簡易にする。

 また、業界向けクラウドとして、金融業界向けパブリッククラウドである「IBM Cloud for FInancial Services」に全世界の120以上の金融機関がコンソーシアムに参加していることも紹介した。

図7 IBM Cloud for FInancial Services(出典:日本IBM提供資料)

 ミッションクリティカルを支えるクラウド品質という面では、監視や障害対応の仕組みを高度化し、2021年から2022年にかけて重要度の高い障害の発生件数を90%削減したと紹介した。

 さらに、マルチプラットフォームの提供では、「IBM Power」や「IBM zSystems」などのメインフレームを含めて、顧客の既存資産を生かしながらクラウド化をサポートすることを目指す。また量子コンピューティングリソースについても、既に部分的な利用が可能になっていると説明した。

 「共創が価値となる中で、ユーザーやパートナーと枠を超えたチャレンジを続けていきます。また、クラウドに対する新たな価値として、ソブリンクラウドや業界クラウドの取り組みを促進させます。DXが進展する中で、ミッションクリティカルを支えるクラウドとして、品質やサービスの面を強化し、マルチプラットフォームとしてIBM Power、IBM Z、量子コンピュータなどでユーザーに選択肢を提供することを目指します」(今野氏)

図8 ハイブリッドクラウドを活用した変革へ(出典:日本IBM提供資料)
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