鈴木氏はCDPのユースケースを以下のように3つ挙げて説明した。
プライベート接続と豊富な連携インタフェースによって、オンプレミスの既存システムに手を加えずクラウドと連携できる。連携データはプライベート接続されたセキュアな環境に集約でき、オンプレミス側のネットワーク変更や連携 インタフェースの追加開発をすることなくデータ連携が可能だ。
「例えば、基幹システムをクラウドへ移行する際、オンプレミスに残る既存システムとのつなぎの部分に導入したいというニーズに対応できる」(鈴木氏)(図5)
CDPがマルチクラウド環境のデータ連携のハブとなり、適材適所のクラウド活用を実現できるようになる。マルチクラウドとオンプレミスに散在するデータを集約する。分析に対応した形式にデータ変換し、用途に応じて最適なクラウドを利用してデータ集約、分析を実施できる。
「オンプレミスとクラウドそれぞれの顧客データをクラウドのデータウェアハウスやビジネスインテリジェンス(BI)ツールに連携させて分析したいというニーズに対応できる」(鈴木氏)(図6)
オンプレミスに蓄積された機密性の高いデータをデータマスキングで秘匿化する。クラウドで安全にデータを活用できる。個人情報などの機密性の高いデータは特定できないようにマスキングし、匿名化したデータは分析やマーケティングオートメーション(MA)などの外部クラウドで安全に活用できる。
「例えば、アプリケーション開発におけるテストデータの作成というケースが考えられる。本番データの機密性の高い部分をマスキングすることにより、本番さながらのデータ量とバリエーションを持つテストデータを簡単につくることができる」(鈴木氏)(図7)
上記の3つの例は、マルチクラウド環境におけるユースケースの典型例でもある。
マルチクラウドのデータ連携は、先ほど述べたように、今後さまざまな課題が浮かび上がる可能性が高い。筆者が取材を通じて最も耳にするのが、それぞれの活用シーンで処理スピードをはじめとしたパフォーマンスが期待通りに出るかどうかだ。会見でそのあたりの感触を尋ねると、鈴木氏は次のように答えた。
「パフォーマンスについては、活用シーンごとのデータ量やデータ連携フローの処理のロジックによってどのくらい負荷がかかるかにもよるので、やってみないと分からないところが相当程度ある。その感触を早くつかむという意味でも、スモールスタートしてパフォーマンスに応じて機能を拡張するという方法をお勧めしたい」
「やってみないと分からない」「その感触を早くつかむためにもスモールスタートする」――マルチクラウドのデータ連携もそうだが、企業におけるDXそのものの取り組み姿勢としても重要な考え方ではないだろうか。2022年最後の本連載はこのメッセージで締めくくりたい。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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