マルチクラウドでのデータ連携はどうあるべき? IIJの新サービスから探るWeekly Memo(1/2 ページ)

企業のITシステムにおいてマルチクラウド利用のニーズが高まる中で懸念されているのが、データ連携がスムーズにできるかどうかだ。IIJの新サービスからその注意点や可能性を探ってみたい。

» 2022年12月26日 14時00分 公開
[松岡功ITmedia]

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 インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は2022年12月12日、クラウド利用におけるデータ活用を推進するデータ連携サービス「IIJクラウドデータプラットフォームサービス」(以下、CDP)を発表した。CDPは同年12月21日から提供を開始している。

 オンプレミスのシステムと複数のクラウドサービスによるマルチクラウド環境を流れるデータをCDPに集約することで、既存のシステムに影響を与えず必要なデータを抽出し、クラウドサービスへデータを連携させることができるという。

右から、IIJの染谷 直氏(執行役員クラウド本部長)と鈴木 透氏(クラウド本部サービス企画室長)

(訂正と更新)当初公開した記事では「『オンプレミスとクラウドをつなぐハブとして簡単、セキュアな…』」との発言を染谷氏によるものであるように記載していましたが、執筆者より該当の発言者は染谷氏ではないとの指摘があったため、修正しました。合わせて同じ文章の後半部分について、「というのが同社の正確な説明だ」に修正しました(2022年12月26日18時更新)。

マルチクラウドのデータ連携に向けたIIJの新サービス

 DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業のITシステムにおいて、マルチクラウド利用のニーズが高まっている。一方で、マルチクラウド間の連携が複雑になり、処理スピードをはじめとしたパフォーマンスやセキュリティ、運用管理など、さまざまな課題も浮かび上がってきた。本稿では、IIJの新サービスからマルチクラウドによるデータ連携の注意点や可能性を探りたい。

 新サービスの発表会見をオンラインで実施したIIJの染谷 直氏(執行役員クラウド本部長)は、同社が提供するマルチクラウドを支えるサービスコンセプトとして「4つのハブ」を紹介した(図1)。

図1 IIJが提供するマルチクラウドを支えるサービスコンセプト(出典:IIJの会見資料)

 つまり、マルチクラウドはこの4つの構成要素から成り立っているといえる。その中でも今後特にさまざまな課題が浮かび上がってくる可能性が高いのが、データ連携の領域だ。すでにインフラやネットワーク、オペレーションの各ハブに向けてサービスを展開している同社としては、今回データのハブに向けてCDPを提供することで、マルチクラウドの課題に全方位で対応できる体制を整えた格好だ。

 染谷氏はCDPを投入した狙いについて「マルチクラウドにおいてはシステム間のデータ連携が複雑化し、データ連携のインタフェースの開発にコストや時間がかかることや、オンプレミスに蓄積された機密性の高いデータを、クラウド上でセキュアに扱えるようにすることが課題となっている。こうした状況を受け、当社はお客さまのデータ連携におけるさまざまな負担を軽減し、低コストかつ安全なデータ活用を支援していくためにCDPを開発し提供することにした」と説明した(図2)。

図2 マルチクラウド環境でのデータ活用の課題とCDPの狙い(出典:IIJの会見資料)

 CDPについては「オンプレミスとクラウドをつなぐハブとして簡単、セキュア、低コストにデータ連携を実現するPaaS(Platform as a Service)型サービス」というのが同社の正確な説明だ。

 染谷氏に続いて説明に立ったIIJの鈴木 透氏(クラウド本部サービス企画室長)は、その特徴について次のように述べた。

 「CDPでは主要なクラウドサービスのデータ連携方式に対応した連携アダプターをあらかじめ準備している。それらをノーコード開発ツールによって組み合わせることで簡単にデータ連携フローを開発できる。また、IIJのネットワークサービスを組み合わせたプライベート接続により、インターネットを経由せずにデータをやりとりできる。機密性の高いデータを秘匿化するデータマスキング機能など、データセキュリティに配慮した機能も十分に備えている。こうしたデータ連携の仕組みをクラウドらしく低コストにスモールスタートできる価格帯でサービスとして提供している」(図3)

図3 CDPの概要(出典:IIJの会見資料)

 連携アダプターについては「Salesforce」「Amazon Web Service」(AWS)などのクラウドや、「Oracle Database」「Microsoft SQL Server」といったデータベースなど90種類以上を用意している。連携のためのデータフローをノーコードで開発するツールとして、アステリア社の「ASTERIA Warp」を採用した(図4)。

図4 豊富な連携アダプター(出典:IIJの会見資料)
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