2023年のIT需要はどうなるか――富士通とNECに聞いてみたWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2023年02月06日 15時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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NECのIT需要の見通しは

 NECが2023年1月30日に発表した第3四半期の受注状況は、グローバルを含めた全体が前年度同期比11%増、第1四半期からの9カ月累計で同14%増と好調に推移した。全体で見たITサービスも9カ月累計で同10%増と2桁成長を遂げている。

同社の藤川 修氏(執行役員常務兼CFO)

 こうした受注状況の全体の動きについて、同社の藤川 修氏(執行役員常務兼CFO)はオンラインでの発表会見で、「第3四半期および9カ月累計とも全ての事業分野でプラスとなった。ITサービスもエンタープライズ分野を中心に旺盛な需要が続いている」と手応えを語った。

 事業分野別では、社会公共が第3四半期で前年度同期比16%増(9カ月累計で同15%増)、社会基盤が同25%増(同8%増)、エンタープライズが同5%増(同11%増)、ネットワークサービスが同22%増(同7%増)となった(表2)。

表2 NECの各事業分野における最新受注状況(出典:NECの決算資料)

 藤川氏は事業分野別の受注状況について、次のように説明した。

 「社会公共は都市インフラや中堅中小企業向けが好調に推移。社会基盤は防衛向けが増加した。また、2021年度第2四半期に宇宙関連の大型受注があったので今回の9カ月累計は8%増となっているが、その大型受注を除くと18%増となる。エンタープライズは旺盛な需要を受けて好調に推移している。ネットワークサービスは5Gが拡大したことに加え、第3四半期に知財収益を計上した」

 2023年のIT需要の見通しを聞いた筆者の質問に対しては「現時点で懸念する点はない。事業分野別では、社会公共は大型商談につながる動きが活発になる時期に入っていく。流通サービス分野でも大型商談が動き始めている。金融も安定した需要が続くと見ている。全分野でいえるのは、ITサービスの中でもDXのニーズがここにきて非常に高まってきていることだ。2023年はDXの動きがさらに活発になっていくので、当社としてもしっかりとニーズに応えられるように体制を整えていく」と答えた。

 両社とも3月期が年度決算なので、今回は冒頭で述べたように2022年度第3四半期の発表となった。2023年初めでもあるので、質問で2023年のIT需要見通しを聞いたところ、両CFOからはそれを意識したコメントをもらえた。

 中でも印象深かったのは、「DX需要の確かな手応え」が異口同音に語られたことだ。本連載でもこれまで幾度もIT需要の見通しを取り上げており、マクロ経済とIT需要は連動するところがあった。しかし、「マクロ経済が不透明だからこそ早急にDXに取り組むべきだ」という動きが、企業の間で広がってきている。このところの取材でそう感じていたが、今回の両CFOの見解を聞いて確信を持てた。

 一方で、DXを「IT武装の延長線上」や「デジタルスキルの向上」程度にしか認識していない企業も多い。経営改革でありビジネスモデル変革を意味するDXに対し、その根本的な認識が乏しいまま中途半端に取り組むと、いつまでたっても投資対効果を生み出せずに失敗する可能性が高くなる。2023年はその成否も明らかになるのではないか。DXに取り組む企業にとっては、この1年が正念場だという姿勢で臨んでもらいたい。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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