日本企業のDXはどこまで進展しているか――ITRの最新調査から探るWeekly Memo(1/2 ページ)

日本企業のDXはどこまで進展しているのか。DX関連予算の計上の有無からDXを推進する体制づくり、DX推進によって成果が上がっているかどうかまで、ITRによる最新の調査結果から探る。

» 2022年11月21日 12時00分 公開
[松岡功ITmedia]

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 日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)はどこまで進展しているのか。DXをどう捉えるかという定義の問題もあって実態をつかむことがなかなか難しい。アイ・ティ・アール(以下、ITR)が2022年11月16日に発表した「国内IT投資動向調査報告書2023」に興味深い調査結果があったので、それらの内容を基に考察する。

4社のうち3社がDXを推進する体制づくりを実施

 同調査は、国内企業のIT戦略、投資の意思決定に関わる役職者に対して2022年8月19日〜9月1日にWeb経由で実施し、2172人から回答を得たものだ。IT投資動向の調査結果の概要については速報記事を参照いただきたい。本稿ではDX関連の調査結果に着目し、発表日に開催された記者説明会でのITRの三浦竜樹氏(プリンシパル・アナリスト)と水野慎也氏(シニア・アナリスト)による解説を踏まえながら話を進める。

 まず断っておきたいのは、DXについての解釈は同調査では特に定義しておらず、回答者の判断に委ねられている点だ。その意味では、回答者の間に解釈の違いもあるだろうが、同じスタンスでさまざまな傾向を見ていく上では貴重な調査だ。

 DX関連予算の計上の有無を聞く質問に対する回答は「計上している」が49%、「計上していない」が51%と、二分した結果となった(図1)。

図1 DX関連予算の計上の有無(出典:ITR「国内IT投資動向調査報告書2023」記者説明会資料)

 図2は、IT予算のうちのDX関連予算の比率を業種別に示したグラフだ。

図2 IT予算のうちのDX関連予算の比率(出典:ITR「国内IT投資動向調査報告書2023」記者説明会資料)

 全体平均の21.9%に対して、「製造」(26.1%)と「卸売・小売」(22.2%)がDXに積極的であることが分かる。筆者は逆に、「公共」(16.5%)と「金融・保険」(17.1%)の比率が低いことが気になった。ITRによると「25%未満の企業は全体の約7割」だった。これも筆者は逆に「25%以上が3割」存在することに着目した。この割合が今後、どのように推移するのか興味深い。

 図3は、DXに向けた体制・プロセスの整備状況の変化を示したグラフだ。

図3 DXに向けた体制・プロセスの整備状況の変化(出典:ITR「国内IT投資動向調査報告書2023」記者説明会資料)

 2022年調査で最も大きな変化が見られたのは、「デジタル戦略遂行のための人材配備を行っている」の35%で、2021年調査から6ポイント上がった。一方、「経営戦略の中で、デジタル戦略のビジョンや方針が位置付けられている」は、2021年調査では30%と2020年調査から7ポイントアップしたが、2022年調査では1ポイントアップにとどまった。この結果にITRは「経営戦略としてDXを位置付ける先行企業は3割程度でいったん落ち着き、2022年は先行企業がDXの実行段階に入った」との見方を示した。

 図4は、DX専任部門の設置状況の変化を示したグラフだ。

図4 DX専任部門の設置状況の変化(出典:ITR「国内IT投資動向調査報告書2023」記者説明会資料)

 2019年調査と2022年調査の結果を比べると、「DXを推進する専任部門が設置されている」割合は15%から24%へと着実に増えている。専任部門は存在しないものの「既存部門がDX推進を担当している」「部門横断型のプロジェクトチーム(タスクフォース)がDXを推進している」を合わせた企業の割合が61%から76%に増加している。これについて、ITRは「4社のうち3社がDXを推進する体制づくりを行っている」との見方を示した。

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