2023年度のIT投資動向調査 最も売れる分野が明らかに

ITRの調査によると、2022年度にIT予算を増額した企業の割合は調査開始以来初の4割超となった。2023年度も継続が予想される高い投資意欲はどこへ向かうのか。ITRが予測する、2023年度に導入が増加する製品、サービスを見てみよう。

» 2022年11月18日 07時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 アイ・ティ・アール(以下、ITR)は2022年11月16日、企業のIT投資動向に関する調査結果を発表した。

 同調査は、国内企業のIT戦略、IT投資の意思決定に関与する役職者を対象に2022年8〜9月に実施したもので、2172人から有効回答を得た。

2022年度にIT予算を増額した企業は「過去最多」

 同調査によると、2022年度のIT予算額を2021年度から増額した企業の割合は、2021年調査比で6ポイント増の41%に上り、2001年の調査開始以来最高値を記録した。2021年度から減額した企業は2021年度調査比で4ポイント減の7%となった。

IT予算額の増減(2021〜2023年度予想)(出典:ITRのプレスリリース)

 売上規模別に見ると、増額した企業の割合が最も高いのは「500億〜1000億円未満」で、増額した企業が過半数に上った。中堅企業に大企業を上回るIT予算増額の動きが見られた。

 増減傾向をITRが独自に指数化した「IT投資インデックス」の実績値は3.39と2年連続で上昇した。3.39は2006年度以来の3ポイント台と高い値になり、IT予算増額に前向きな企業が増えているといえる。

IT投資インデックスの推移(2001〜2023年度予想)(出典:ITRのプレスリリース)

 2023年度のIT投資インデックスの予測値は3.32で、2022年度と同水準の投資意欲が継続する見込みだ。ITRは「コロナ禍によるビジネス環境の変化とDX(デジタルトランスフォーメーション)に対する意欲の高まりがIT投資の増額を後押ししている」と推察する。

2023年度に導入が増加する製品、サービスは?

 今後のIT投資動向を探るため、ITRは企業ITに関わる代表的な製品、サービスを「インフラ、デバイス」「ミドルウェア」「業務系システム」「情報系システム」「セキュリティ」の5分野から全110項目を選出し、2023年度に向けた投資額の増減と新規導入の可能性を調査した。

 調査結果を基に、新規導入する可能性のある企業の割合を「2023年度新規導入可能性」、導入済み企業における投資額の増減傾向を「投資増減指数」として算定して動向を分析した。この分析によると、2023年度の新規導入可能性では2021年の調査結果と同じく「電子契約、契約管理」が1位になった。投資増減指数では2021年2位だった「BI(ビジネスインテリジェンス)、データ分析」が1位となった。

2023年度に新規導入、投資増額が期待される上位10製品、サービス(出典:ITRのプレスリリース)

 その他、新規導入可能性では「AI(人工知能)、機械学習プラットフォーム」「5G」(パブリック)、「IoT」が上位に上がった。これらの3つは投資増減指数でも5位以内に入ったことから、ITRは「未導入、導入済み企業ともに2023年度に投資意欲が高まる」と見込む。

 コロナ禍によって投資ニーズが急拡大した「ビデオ会議、Web会議」などの在宅勤務対応の投資は落ち着くと見られる。「2023年度に向けてデジタルビジネスと関連性の高い製品、サービスへの投資にシフトする」とITRは予測している。

DX実践フェーズでの成果獲得に向けたIT投資計画策定を

 今回の調査結果を受けて、ITRの三浦竜樹氏(プリンシパル・アナリスト)は「社会情勢が大きく変化する中、2022年度の国内企業のIT投資インデックスは2年連続で上昇し、投資が拡大路線にあることが示された」と解説する。

 「DXの取り組みには進展が見られ、特に『ワークスタイルの変革』と『業務の自動化』の取り組みでは成果が出ている企業が増えている。DX推進に向けてデジタル人材の育成に着手する動きも見られるなど、DXへの取り組みは戦略策定フェーズから実践フェーズに移り始めている」(三浦氏)

 具体的なIT製品、サービスへの投資意欲に関しては、2023年度は2022年度と同様に、AI・機械学習プラットフォーム、5G(パブリック)、IoT、エッジコンピューティングといったデジタルビジネスとの関連性が高い製品、サービスへの投資意欲が高い。

 投資増減指数の6位に「VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)」がランクインしていることを受け、三浦氏は「今後IT部門は、こうした先進技術への理解を深め、自社における効果や適用可能性、課題などを議論、整理するとともに、DXの成果獲得に向けたIT投資計画を策定することが求められる」と述べる。

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