自治体向けソリューション、2026年度に「大幅減少」の理由は? 矢野経済研究所が市場調査

自治体向けソリューション市場は今後大きく伸びるものの、2026年度にいったん大きく減少すると矢野経済研究所は予測する。デジタル庁の号令で全国規模で自治体のデジタル化が進む中、なぜ市場が縮小すると同社はみるのだろうか。

» 2023年02月07日 10時15分 公開
[田中広美ITmedia]

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 矢野経済研究所は2023年2月6日、国内の自治体向けソリューション市場の調査結果を発表した。

「2026年は前年度比34.3%減」 なぜこれほど減るのか?

 矢野経済研究所は、2021年度における自治体向けソリューション市場が事業者売上高ベースで7256億3000万円、前年度比で7.2%増になったと推計する。

 2022年度には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の需要は大幅に減少し、コロナ禍前の水準に近づく見込みだ。こうした影響によって、2022年度の自治体向けソリューション市場は前年度比3.5%減の7002億5000万円になると矢野経済研究所は予測する。

自治体向けソリューション市場規模推移、予測(出典:矢野経済研究所のプレスリリース) 自治体向けソリューション市場規模推移、予測(出典:矢野経済研究所のプレスリリース)

 2021年度はCOVID-19の拡大に関連して、特に自治体向けのBPOサービス(ワクチン接種券印刷・発送、相談窓口、ワクチン予約コールセンター、接種後のデータ入力等のバックヤード業務代行など)が大きく拡大した。COVID-19対応に関するシステムの構築や導入の増加が市場を押し上げた。COVID-19による需要増は2020年度から始まっており、2021年度は特需となった。

 自治体向けソリューション市場にとって大きなイベントとなる基幹系(住民情報系)システムの標準化については、2022年8月に政府が標準仕様書を公開してITベンダーが標準仕様準拠システムの開発に着手している段階にある。「2023年1月時点では基幹系システムの標準化が市場に及ぼす影響はまだない」と同社はみている。

 2023年度以降、基幹系システム標準化とガバメントクラウドへの移行は大きく市場に影響し、2025年度までは自治体向けソリューション市場を押し上げる要因となる。その後、標準化、移行が終了する2026年度にはITベンダーの基幹系システムやクラウド事業売上の減少などによって市場が縮小する見通しだ。

 2026年度の自治体向けソリューション市場はいったん大きく減少し、前年度比34.3%減の6531億円になると予測する。

2026年以降の市場の動きは?

 日本政府は自治体の基幹系システムを2025年度末までに標準化仕様に準拠したシステムに統一して、デジタル庁が調達するガバメントクラウドで運用するという方針を決定している。矢野経済研究所は、「これを受け、自治体向けソリューション市場では、2026年度以降の成長領域を開拓する動きが進んでいる」とみている。

 特に同社が注目するのが岸田政権の重点政策である「デジタル田園都市国家構想」だ。「行政手続きのオンライン化や(中略)スマートシティーの取り組みとも重複しており、ヘルスケアやモビリティ、観光、金融など幅広い領域でデジタル化が推進されている。2023年度には(これらの領域で)いっそうの活性化が見込まれる」と同社は推測している。

 なお、同調査は自治体向けソリューションを提供するITベンダーおよび自治体を対象として2022年10月〜2023年1月に実施された。調査方法は矢野経済研究所の専門研究員による直接面談(オンライン含む)と文献調査が併用された。

 同調査における自治体向けソリューションとは、地方自治体で導入される情報システムを指す。市場規模にはハードウェアやソフトウェアの購入費、レンタル・リース料、保守・サービスサポート料、回線使用料、要員派遣費、アウトソーシング(BPOサービス)費などを含む。

 地方自治体側の費目における機器購入費や情報システムの委託費、各種研修費用、アウトソーシング(BPOサービス)費などを含む。自治体職員の人件費、政府が自治体に交付する補助金、政府によるガバメントクラウドなどの調達費は含まない。

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