東京都と日本マイクロソフトが連携――「行政DXのロールモデル」になるか?Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2023年02月13日 14時30分 公開
[松岡功ITmedia]
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「東京都DXモデル」の全国への横展開はあるか

 会見の質疑応答は、東京都副知事の宮坂学氏と、日本マイクロソフト業務執行役員デジタルガバメント統括本部長の木村 靖氏が対応した。

会見で質疑応答を行う東京都副知事の宮坂学氏(右)と日本マイクロソフト 業務執行役員 デジタルガバメント統括本部長の木村 靖氏(会見時に筆者撮影)

 宮坂氏は日本マイクロソフトをパートナーに選んだ理由について次のように答えた。

 「これまでは東京都庁のデジタル化を進めてきたが、これからはGovTech東京の活動によって、都庁だけでなく、62区市町村のデジタル化を全面的に支援していく。そこで不可欠なのが、信頼できるデジタルテクノロジー企業とのパートナーシップだ。その中でも都庁および62区市町村のおよそ27万人の職員全員がMicrosoft製品を使っていることから、やはりマイクロソフトに最初に相談すべきだと考えた。またクラウドサービスについて知見を蓄積されているとともに、世界のさまざまな都市と協働されているので、DXのベストプラクティスについても協定を通じて学びたいと考えた」

 木村氏はこの宮坂氏の発言を受けて、「当社を最初のパートナーに選んでいただいて感謝申し上げたい。当社としては、東京都のDXに向けたさまざまな取り組みについて精いっぱい支援していく。当社のグローバルネットワークを通じて東京都の活動を世界に発信していく役目も担いたい」と述べた。

 筆者の「自治体がDXに向けてデジタルテクノロジー企業とパートナーシップを結ぶケースはすでに幾つか公表されているが、今回の連携は東京都にとどまらず全国的に大きなインパクトがあるのではないか」という質問に対し、宮坂氏は次のように答えた。

 「デジタルテクノロジー企業とのパートナーシップについては、その企業が得意とする領域を対象に、具体的に何をやるかをスピーディーに決めてどんどん着手していくことが大事だと考えている。今回、われわれがマイクロソフトとパートナーシップを組んだのは、テクノロジーにとどまらない幅広い領域が対象だ。そうしたパートナーシップの在り方も得意分野をベースに『型』として捉えることで、それぞれの自治体が求めるパートナーを見つけやすくなるのではないか。その型をはじめ、東京都におけるDXの取り組みのノウハウやドキュメントは基本的に全て公開する。全国の自治体の皆さんに参考になるところがあれば、大いに利用していただきたい」

 実は、このやりとりには伏線がある。筆者は2022年11月に宮坂氏を単独取材した。その際も、GovTech東京をはじめとした東京都のDXの取り組みについて、「東京都における東京全体のDXの進め方が、全国の自治体のロールモデルになり得るか」と今回と同じ意味合いのことを聞いたところ、次のような答えが返ってきた。

 「現在、全国の自治体で約1700のシステムが稼働しているが、行政として同じ業務システムを共通に使えるようにすれば、かなり効率化を図れるのは明らかだ。そうした共通化した仕組みを都と区市町村の間に入った形で活用できるようにしようというのが、GovTech東京の目的だ。行政DXでは『誰一人取り残さないデジタル化』をキャッチフレーズにしているが、これは個々の自治体にも当てはまる。GovTech東京の活動にはそうした意図も込められている。その意味では、都道府県の今後の役割は一層重要になると考えている」

 今回の質問で筆者が使った「全国的に大きなインパクト」や上記の「ロールモデル」という言葉への反応については、宮坂氏はあえて避けた印象だが、今回では「全国の自治体」、そして上記では「都道府県の今後の役割」に言及したところに、「東京都DXモデル」の横展開への思惑が見て取れた。

 とはいえ、東京都のDXの取り組み自体、始まったばかりだ。日本マイクロソフトの支援ぶりも合わせて、今後の展開に注目していきたい。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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