世界一クラウドストレージが「売れる」のはAPAC地域、ただし日本は独自の課題も

Wasabi Technologiesがパブリックストレージ利用に関するグローバル調査を公開した。APAC地域はストレージ投資が増える見込みだが、攻めの投資傾向が強いシンガポール、豪州と比較して日本は異なる傾向が見えた。

» 2023年03月02日 13時00分 公開
[山口哲弘ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

2023年 Global Cloud Storage Index(出典:Wasabi Technologiesの公開資料)

 「Amazon S3」(Simple Storage Service)互換のクラウドストレージを提供するWasabi Technologies(Wasabi)は2023年2月28日、パブリックストレージ利用に関する調査「2023年 Global Cloud Storage Index」の結果を発表した。各国のデータ活用状況を見ると、アジア太平洋地域(APAC)の企業に特徴的な傾向があることが分かった。

APACは世界一クラウドストレージが「売れる」 ただし使い方にはお国事情

 企業のIT部門の意思決定者を対象に、Wasabiが委託した英国の市場調査会社Vanson Bourneが調査した。回答者の内訳はグローバルで1000人(APACは日本100人、オーストラリア50人、シンガポール50人の計200人)。

 APACの企業は世界平均と比べて、ストレージ容量(データ保存)にかかる費用よりも、その運用に伴う各種の機能やサービスにかかる料金に、多くのコストを費やしていることが分かった。

 Wasabiの戦略・市場情報担当シニアマネジャーを務めるアンドリュー・スミス氏は、「APAC市場の特徴は、DXを支援するために新しい技術を採用し、クラウドサービスを導入しようとする企業の意欲が高いことだ。APACの企業はクラウドストレージ費用の半分以上をAPI操作やエグレス(出力ダウンロード)、データ検索にかかる『データ運用料金』が占めているにもかかわらず、同地域は今後1年間でのクラウドストレージ量と予算の成長率が世界で最も高くなると示唆されている」と述べている。

 今回の調査では、APAC地域の傾向として、パブリッククラウドストレージを活用し、マルチクラウドの利用でほかの地域をリードしていることが明らかになった。

 具体的には「パブリッククラウドに保存するデータ量が今後1年間で増加する」と予測した人の割合は、世界全体の84%に対してAPACでは85%とやや上回った。「2023年にクラウドストレージの予算が増加する」と予測した人は、世界全体の84%に対してAPACでは87%だった。

 また「2022年に、ストレージをオンプレミスからクラウドに移行した」と回答した人の割合は、世界平均の89%に対してAPACは93%だった。「複数のパブリッククラウドストレージプロバイダーを利用している」割合は、世界平均の57%に対してAPACは61%だった。

日本は運用が「重い」傾向、予算オーバー企業も多い

 日本に目を向けると、クラウドストレージへの移行率は高いが、費用や予算の超過が課題になっていることが分かった。

 クラウドストレージの利用料金は「ストレージ容量にかかる費用」(49%)よりも、ストレージの運用や検索、転送、分析など「データ運用料金」(51%)の比率が高い。他国と比べると、「データ運用料金」はオーストラリアとシンガポールが50%。世界平均は、「ストレージ容量にかかる費用」が51%、「データ運用料金」が48%だった。

 「2022年にIT予算を超過した」と回答した人の割合は、日本では56%。その主な理由は、データとストレージの使用量が予想を上回ったことと、地域間レプリケーションなどデータ運用料が予想を上回ったことだった。

 日本でストレージ容量をパブリッククラウドに移行する要因のトップは、「オンプレミスで利用可能な範囲を超えたリソース拡張の必要性」(43%)だった。クラウド移行についての課題のトップは、「移行プロセスに伴う計画的、または非計画的なダウンタイム」(40%)だった。

シンガポールは持続可能性、ガバナンスを重視、豪州は予算積み増し

 これに対して、同じAPACでもシンガポールでは、クラウドストレージプロバイダーを選定する際の最重要項目は「持続可能性」(52%)であり、APAC平均や世界平均(どちらも43%)を大きく上回っていた。

 2023年にクラウドストレージの予算が増加する要因として、「新たな規制やコンプライアンス要件」といったデータガバナンスを挙げた人の割合も、シンガポール(49%)は日本やオーストラリア(どちらも35%)よりも高かった。

 一方、オーストラリアは、クラウドストレージの予算と容量の拡大に関する地域別予測で他国を上回った。

 「2023年にパブリッククラウドに保存するデータ量が増加する」と予測した人の割合は、日本の84%、シンガポールの78%に対してオーストラリアは92%。「2023年にクラウドストレージの予算が増加する」と予測した人は、APAC平均の87%に対してオーストラリアは98%だった。

 Wasabiのスミス氏は、「APAC地域はあらゆるテクノロジーベンダーにとって重要な市場であり、現地のITリーダーから得たこれらの知見は、当社にとって市場特有のクラウドストレージの利用や支出傾向を理解する上で非常に重要だ。特に、ベンダー選定時に『持続可能性』が重要な検討事項とする回答はシンガポールで際立って多いが、APAC平均でも43%となっており、今後注目すべき項目だ」と述べている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ