「意味のない議論」が生み出すのはDXではなく「やった感」だけ 限られた時間で効果的に結論を導き出す4つの手法脱「丸投げDX」のための「デザイン思考」の使い方(3)(2/2 ページ)

» 2023年03月27日 08時00分 公開
[小原 誠ITmedia]
前のページへ 1|2       

3.「Round Robin」 複数人でアイデアを発想する

 3つ目の手法である「Round Robin」(持ち回り)は、3人以上のグループで役割を交代しながらアイデアを発想する手法です。

 ステップ1でメンバーに紙を配り、上段に「取組目標(問題定義)」とその「実現方法(解決方法)」を書きます(図3参照)。

 ステップ2でその紙を自分の左隣の人に渡し、紙を受け取ったら右隣の人が書いた「取組目標」とその「実現方法」に対し、紙の中段に「実現方法がうまくいかない理由」を書きます。この時対応策を書く必要はありません。

 ステップ3でその紙を再度自分の左隣の人に渡します。受け取った紙には「取組目標」「実現方法」「実現方法がうまくいかない理由」が書かれていますので、それを踏まえて「最終的な実現方法」を書きます。

 各ステップの時間は5分程度、長くとも10分程度が良いでしょう。意図的に短めの時間にすることで適度な緊張感が生まれます。

 Round Robinでは1人1つのアイデアを発想し、それをグループ内で他の視点を取り入れながらより良いものにします。複数人で回しながらアイデアを作ることで「それが一体誰のアイデアか」が曖昧(あいまい)になり、「言い出しっぺが実際にやる」といったありがちな雰囲気や圧力を抑えられるという特徴があります。

図3 Round Robinの例(筆者作成)

4.「Importance/Difficulty Matrix」 アイデアの実行に優先順位をつける

 4つ目の手法である「Importance / Difficulty Matrix」(重要度・難度マトリクス)は、複数あるアイデアに優先順位をつけて効果的な選択を実現する手法です。

 横軸に「重要性」(右にいくほど重要)、縦軸に「難度」(上に行くほど易しい)などの4象限にアイデアを配置して、「重要で易しいもの」(右上)から優先的に取り組むというものです(図4参照)。

 複数あるアイデアから一つを選ぶとき、よくあるケースは投票を用いることですが、人によって基準が異なり、選ばれたものが本当に良いものかどうかの判断は困難です。一方、Importance/Difficulty Matrixのように一定の基準で優先度をつければ、より思慮深い決定が可能です。

図4 Importance/Difficulty Matrixの例(筆者作成)

オンラインで議論するには専用ツールの活用も視野に

 デザイン思考の議論では「参加者が一体感を持ってワイワイガヤガヤと進める」ことがとても大切です。そのため、可能であれば対面で議論することが望ましいです。しかし、時間や場所の制約からオンライン開催となる場合は、専用のツールを活用することも視野に入れましょう。

 「MURAL」や「Miro」などは比較的よく知られたオンラインワークショップツールで、Webブラウザから直感的な操作で利用できます。これらは単なるホワイトボードではなく、複数人でリアルタイムに共同編集できる付箋機能やタイマー機能などを備えています。また、今回ご紹介したようなさまざまな手法のテンプレートや、「ビジネスモデルキャンバス」などのフレームワークをテンプレートとして備え、手軽に議論を始められます。

 ビデオやチャット、プレゼンテーションの画面共有などには既存のオンライン会議ツールを使い、デザイン思考で議論をする場面はこれらのツールも併用する、といった使い方が有効です。

 本稿は議論で使われるさまざまな手法から4つを紹介しました。デザイン思考ではこれら以外にも場面に応じて使い分けできるさまざまな手法が公開されています。これらの手法は議論の目的や時間などの制約条件に応じて、必要なものを組み合わせて利用できます。ファシリテーターは議論の前に、「どの手法を組み合わせて、どのように議論を進めるか」をきちんと考えておくことが重要です。

 最終回となる次回、第4回では、デザイン思考を利用したワークショップなどの事例を紹介し、実践に向けた幾つかの「コツ」を紹介します。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ