医薬品のトレーサビリティーにブロックチェーンを採用 メーカー、卸、物流会社が共通基盤で運用医療情報連携は進むか

医薬品のメーカー、卸、物流会社が製品トレーサビリティー確保に向けた検証を進める。情報連携の基盤にブロックチェーンを使い、参加企業で組織するコンソーシアムで運用する。医療情報連携の一端を担うようになるだろうか。

» 2023年03月28日 13時00分 公開
[山口哲弘ITmedia]

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 日本IBMは2023年3月27日、「ヘルスケア・ブロックチェーン・コラボレーション」(HBC)の取り組みの一環として、塩野義製薬や武田薬品工業、田辺三菱製薬、ファイザーの4社を中心に検討してきたブロックチェーン技術を活用した医薬品の流通経路と在庫の可視化に関して、2023年4月に運用検証を開始すると発表した。

 運用検証には、これまでHBCで検討してきた4社と日本IBMに加えて、沢井製薬や武田テバファーマなど製薬企業5社と、アルフレッサやスズケングループなど医薬品卸7社、日本通運や日立物流など物流会社4社が協力企業として参加する。

HBCの取り組み概要(出典:日本IBMのプレスリリース)

各社在庫情報を参照、製造から温度管理、調剤、投与を共通基盤で管理

 運用検証には下記の企業が参加する。

参加カテゴリー 企業名
HBC参加企業 塩野義製薬、武田薬品工業、田辺三菱製薬、ファイザー、日本IBM
製薬企業 沢井製薬、武田テバファーマ、日医工、他2社
医薬品卸 アルフレッサ、スズケングループ(スズケン、エス・ディ・コラボ)、東邦ホールディングス、メディパルホールディングス、バイタルケーエスケー・ホールディングス、フォレストホールディングス、ほくやく・竹山ホールディングス
物流会社 日本通運、日立物流、三井倉庫ホールディングス、三菱倉庫

 運用検証に参加する各企業は、医薬品について、工場出荷から医療機関や薬局での処方や調剤、投与までの一連の流れを医薬品データプラットフォームで管理できるかどうかを検証する。各参加企業は、参加医療機関などでの医薬品在庫情報をアクセス権限に基づいて参照できるようにして偏在庫の解消を検証する。

 品質管理情報として温度管理の在り方など医薬品の適正流通(GDP:Good Distribution Practice)や事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)対応方針についても検討する。医療機関などでの薬剤使用情報を地域フォーミュラリ(地域の医療機関などにおける標準的な薬剤選択の使用方針に基づく採用医薬品集とその関連情報の利用)推進支援に役立てるための機能も開発予定だ。

 HBCは、日本IBMが2018年10月に製薬企業や医療機関など約20の企業や団体と設立したコンソーシアムだ。医療業界や製薬業界の情報交換の仕組みとしてブロックチェーン技術を活用することを検討している。医薬品の流通データは、製薬企業や医薬品卸、医療機関の一部で連携されているものの、一貫してつながってはおらず、分断管理された状態にある。日本IBMはブロックチェーン技術を活用してそれらのデータに安全にアクセスできる一貫したプラットフォームを構築することで、新たな価値の創出が可能になるとしている。

 品質の保持や偽造医薬品の流通防止といった観点から、工場出荷から廃棄までの医薬品の追跡を可能にするトレーサビリティーの強化が求められている。すでに欧米では法制化されており、日本ではHBCが製薬業界だけでなく医薬品卸や医療機関、物流企業と協力して医薬品流通経路や在庫を可視化し、トレーサビリティーを実現する「医薬品データプラットフォーム」を検討してきた。

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