中堅・中小企業のDXを阻む「経営者の“3つ”の本音」 リコー調査から対策を考察Weekly Memo(1/2 ページ)

中堅・中小企業のDXの進捗(しんちょく)はどうか。リコーが実施した最新の調査結果から、その現状と対策について考察する。

» 2023年04月03日 14時40分 公開
[松岡功ITmedia]

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 日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の進捗(しんちょく)を見る上で、企業数の9割以上を占める中堅・中小企業の状況を知ることは非常に重要だ。その点で、リコーが2023年3月23日に発表した独自調査の結果(注1)に興味深い内容があったので、それを基に中堅・中小企業のDXの現状と対策について考察したい。

6割以上が「必要」ながらも導入率は2割以下

 同調査は、リコーの子会社で中堅・中小企業向けにビジネスを展開するリコージャパンが、同社の顧客で年商300億円以下の企業を中心とした2737社を対象に、2023年2月9日〜3月10日の期間にインターネットを通じて実施したものだ。

 本稿ではその中から「DX導入の必要度」「DXの取り組み状況」「DXの取り組みに対する課題」「社外の相談相手が必要か」「経営者のDX理解度」「業種別のDX取り組み状況」を取り上げる。

 DX導入の必要度については、回答企業の63.1%が「必要」「ある程度必要」と答えた一方で、「既に取り組んでいる」と回答したのは19.1%だった。DXが必要だと感じているものの、実際には進められていない企業が多いことが如実に表れた結果だ(図1)。

図1 「DX導入の必要度」と「DXの取り組み状況」(出典:リコーの独自調査)

 なぜ、DXが進んでいないのか。取り組みに対する課題を聞くと、「費用対効果が見えない」との回答が最も多く、41.8%を占めた。「世界的な物価高や不安定な世界情勢が続く中で、中堅・中小企業のコスト意識はさらに切実なものとなっていることが、DXに踏み切れない状況に少なからず影響しているのではないか」というのがリコーの見方だ。

 次に多く挙げられた課題は、「現場の意識や理解が足りない」(33.1%)。この回答に対するコメントには、「従業員のIT分野に関する知識が足りない」(情報システム部)や「現場が従来のやり方に固執している」(総務部)といった、DXの理解や知識不足に対する本音が多く見受けられたという。

 三番目に多かった課題は、「何から手をつければよいか分からない」(29.8%)。「そもそもDXが何か分からない」(営業部)というコメントもあり、DXに対する知識が追い付いていない状況も見て取れる(図2)。

図2 「DXの取り組みに対する課題」と「社外の相談相手が必要か」(出典:リコーの独自調査)

 課題に関連する回答の中では「業務に適した提案をしてくれる人がいない」(管理部門)といったコメントも確認され、「IT分野の人材や知識不足と相まって、具体的かつ最適なDXの在り方や進め方、道筋を見いだせていないことが、業務のデジタル化が進まない要因となっている可能性が見て取れる」(リコー)という。

 さらに、DXを進めるに当たり「社外の相談相手が必要か」との設問では、「必要」「ある程度必要」との回答が61.7%に達した。「中堅・中小企業の多くが人材不足といわれている中で、専門的な知識を持った第三者の協力が求められていることが明らかになった」とリコーでは見ている。同社にとってはユーザーニーズが明白に見える心強い調査結果である。

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