ChatGPTを使いこなすには“練習あるのみ” 優れたプロンプトに共通する6つの要素CIO Dive

生成AIツールをうまく使いこなすには、ツールに与える指示やガイド(プロンプト)の質を高めることが必要不可欠だ。ChatGPTからほしい回答を得るための6つの要素を紹介しよう。

» 2023年06月16日 08時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

CIO Dive

 生成AI(人工知能)は、「労働者の生産性を高める効果が期待できる」と調査で明らかになっているが(注1)、これはITリーダーがAIへの移行期に従業員をサポートする場合にのみ実現可能になる。

 IT企業のInsight EnterprisesでCIO(最高情報責任者)を務めるスマ・ナラパティ氏は「このテクノロジーについて、その能力や最も効果的な使用方法など、学ぶべきことはまだ多くある」と述べている。

 しかしITチームとそのリーダーは、特にベンダーがビジネスユニット全体に生成AI機能を組み込む際に(注2)、AIツールから恩恵を享受できるよう、従業員のスキルアップ方法を戦略的に考える必要があるだろう。

生成AIのアウトプットを向上させるには、プロンプトの構造を理解せよ

 「ChatGPT」などの対話型生成AIモデルを効果的かつ効率的に利用する上で最も重要な要素の一つが、プロンプトだ。IBM ConsultingのシニアパートナーでAI・アナリティクス部門のグローバルリーダーであるマニッシュ・ゴヤル氏は「プロンプトとは生成AIツールに与えられる指示やガイドのことで、どのようなコンテンツが必要なのか、パラメータやコンテキストを知らせるものだ」と語る。

 「何を尋ねるか」「どのように尋ねるか」「どのような詳細が含まれるか」に基づいて、ツールが作成する内容は決まる。プロンプトは成果を得るための鍵だが、全てが同じように生成されるわけではない。

 電子メールを作成する場合を考えてみよう。ユーザーが生成AIツールに「どれだけ頑張ってきたかを表現する3段落のメールを作ってほしい」とプロンプトを入力した場合、電子メールの受信者、ユーザーが指定した電子メールのトーン、プロンプトに含まれている情報の量によってツールは異なるレスポンスを出力する。

 ChatGPTに、従業員の働きぶりを上司に伝える3段落の電子メールを書くように依頼すると、ツールは件名を生成し、本文は丁寧で尊敬に値するトーンで書かれる。一方でプロンプトにこれらのパラメータを全て含まれているものの「受信者」だけ省略されている場合、ツールは詳細があまり含まれていない電子メールを生成して「会社」に関する言及を削除する。

 さらに、プロンプトに「生意気だ」などの口調が含まれている場合、ツールは全く異なる回答を生成するだろう。

 「生成AIエンジンに入るプロンプトの性質は、得られる結果に信じられないほどの影響を与えることがある。洗練されたプロンプトであれば、AIがより関連性の高い、正確で有用な情報を生成するのに役立つ」(ゴヤル氏)

優れたプロンプトに共通する6つの要素

 ITチームはこのツールに慣れた上でビジネスに役立つ一般的なユースケースを特定する必要がある。

 「優れたプロンプターになるための最良の方法は、練習と生成AIへの理解だ。さまざまなプロンプトのスタイルやアプローチを試せば、質問回答や要約、翻訳など、達成しようとしているタスクに最適なものを発見できるだろう」とゴヤル氏は話す。

 同氏によると、ほとんどの優れたプロンプトには次の6つの共通点がある。

  • Clarity(明確さ):明確で理解しやすい
  • Specific(具体性):求める情報やアウトプットが具体的である
  • Context(文脈):背景情報や回答の目的、対象者などの関連する文脈を含んでいる
  • Understand(理解):AIシステムに対する理解を示している
  • Concise(簡潔さ):要点を押さえたプロンプトである
  • Structure(構造):質問形式や明確なフレームワークが含まれている

 「優れたプロンプターは、目先の利益に気を取られることなく、ビジネスにとって何がベストかを常に考えている。むしろ、ただ新しい技術を使うことを推奨しているのだ」とナラパティ氏は述べる。

事業部門の生成AIツール活用をIT部門はどう支えるか?

 ITチームが生成AIツールの使い方に慣れて、ビジネス特有のニーズに基づいたプロンプトを作成できるようになったら、その知識の一部を他の従業員と共有する必要がある。

 「生成AIがビジネスシーンやワークプレースツールに浸透するにつれて、企業はその効果的な使用方法に関する教育を施し、従業員をサポートするべきだ」(ゴヤル氏)

 AIへの移行期にITチームが他のビジネスユニットをサポートする方法は幾つかある。AIソリューションを提供するSAVVI AIの共同設立者であるマヤ・ミハイロフ氏によると、ITチームはチャットプロンプトのライブラリやユースケースを作成し、従業員が今日の生成AIで達成できること、できないことを明確にする必要があるという。プロンプトに挿入しても構わないデータとそうでないデータの行動規範を策定することも大切だ。

 ミハイロフ氏は「組織がすでに公開されているモデルを使用しているか、既存のモデルを微調整しているか、独自のモデルを使用しているかにかかわらず、ITリーダーは、これらのモデルがもたらす効率性を踏まえて、どのようなタスクがベストなのかに焦点を当てた基本的なリポジトリの開始を検討すべきだ」と語る。

 リポジトリには、ユーザーが何を達成しようとしているのか、どのようにプロンプトを書けばいいのかに基づいた手順が示されている。例えばビジネスアナリストのための一般的なプロンプトが挙げられる。

 ユーザーが適切な回答を得る前に多くのプロンプトを挿入して時間を浪費しないようにするためには、スキルアップが不可欠だ。プロンプトの技術を高めなければ、生成AIツールを使うことでかえって余計な時間を浪費することになりかねない。

 「生成AIツールは、他のテクノロジーと比較して新しいタイプのユーザー体験を作り出している。デジタル変革の際にある種のデジタルツールを使えるように従業員を教育したのと同様、これはAIに対する訓練のようなものだ」と、ミハイロフ氏は話した。

© Industry Dive. All rights reserved.

注目のテーマ