2023年の成長率「大幅に鈍化」の理由は? IDCが国内クラウド市場を予測

企業のクラウド移行は進み、市場拡大が続いている。しかし、IDCによると2023年の国内クラウド市場の成長率は2022年に比べて大幅に鈍化する見込みだ。その理由とは。

» 2023年06月30日 14時20分 公開
[山口哲弘ITmedia]

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 IDC Japan(以下、IDC)は2023年6月27日、国内クラウド市場の予測を発表した。2027年の市場規模は2022年の約2.3倍に当たる13兆2571億円に拡大すると予測している。

クラウド市場の成長率 2023年に「鈍化」するワケ

 2022年の市場規模は、対前年比37.8%増の5兆8142億円だった。IDCは2022〜2027年の同市場の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)を17.9%と見ている。

国内クラウド市場 用途別売上額予測(2022〜2027年) 国内クラウド市場 用途別売上額予測(2022〜2027年)

 2022年の国内クラウド市場はWebシステムや情報系システム、基幹系システムなど幅広く拡大しており、クラウドマイグレーションの対象となるシステム領域やワークロードが市場をけん引している。2022年3月以降、急速に進んだ円安の影響や部材の高騰によって製品やサービスの単価が上昇したことも寄与した。

 2023年の国内クラウド市場は、2022年と比べて成長が大幅に鈍化する見込みだ。2022年が製品やサービスの単価の上昇や、ハードウェア製品の供給不足からの回復によって底上げされた反動で、2023年の成長率は抑制されるとIDCはみている。国内クラウド市場が従来型ITを超える7兆円規模まで拡大したことも成長鈍化の要因の一つだ。

 現在の国内クラウド市場では、ITのリプレースメントや業務効率化を目的としたクラウドの導入、利用が中核となっている。DX(デジタルトランスフォーメーション)やデータ駆動型ビジネスに対する企業の投資は拡大していることから、IDCは今後の国内クラウド市場のけん引役はリプレースメントや効率化から、DXやデータ駆動型ビジネスに移行するとみている。

 IDCの松本 聡氏(Software & Servicesのリサーチディレクター)は「ITサプライヤーは、内製化支援の強化やFinOps(注1)といった新しいアプローチに積極的に取り組むとともに、DXユースケースを設定してオファリングを整備する必要がある。また、最近高い注目を集める生成AIの活用を意識したユースケースの設定にいち早く着手することが重要だ」と述べる。

(注1)Finance(財務)とDevOps(Development《開発》とOperations《運用》を合わせた造語。開発担当者と運用担当者が連携してシステム開発を実施すること)を合わせた造語。財務担当者と開発担当者、運用担当者が強調し、クラウドへの支出を最適化しつつビジネス価値を最大化するためのIT財務管理の方法論。

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