中堅・中小企業のIT支出、「年商規模で大差」 ノークリサーチ調査で判明

ノークリサーチの調査によると、中堅・中小企業のIT支出増減には年商別で大きな差があることが分かった。また、DXの進展段階において、進展がある程度進むと「むしろIT支出は減る」ことも明らかになった。

» 2023年07月18日 07時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 ノークリサーチは2023年7月10日、中堅・中小企業市場におけるIT支出の増減に関する調査結果を発表した。

年商規模で大差

 同調査は、国内全業種の年商500億円未満の中堅・中小企業700社に所属する経営層やIT活用の導入や選定、運用に関わる役職者を対象として2023年4〜5月に実施された。調査結果は「2023年版 中堅・中小企業のDXおよびITソリューション選定の実態レポート」としてまとめられている。

 2023年の中堅・中小企業のIT支出を2022年と比較すると、年商5億円未満(小規模企業層)と年商300〜500億円(中堅上位企業層)ではIT支出増減のDI値(増加と減少の差)に45ポイントの差があることが分かった(図1)。

 業種別で見ると、「組立製造業」「一般サービス業」が中堅・中小企業全体と同様に見える。ただし、「一般サービス業は『判断できない』の値が低い点に留意すべきだ」とノークリサーチは指摘する。

図1 2023年のIT支出の増減見通し。2022年と比較した増減を示す(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

DX進展の途中段階で、IT支出は「むしろ減る」

 一般的にDX(デジタルトランスフォーメーション)関連の取り組みは、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「トランスフォーメーション」の3つの進展段階に分けて論じられる。ただし、中堅・中小市場では、必ずしもこの順でIT支出額が増えるわけではないことが今回の調査から明らかになった。

 今回の調査では、それぞれを以下のように定義した。

  • デジタイゼーション: 業務フローを変えずにデジタル化を進める(例:紙面で送付していた見積書を電子化する)
  • デジタライゼーション: デジタル化によって業務フローを改善する(例:過去データを元に見積書の値引き額の妥当性を自動で判定する)
  • トランスフォーメーション: デジタル化によって顧客や市場を開拓する(例:見積書を送付した企業の属性を元に新たな顧客候補を自動で選定する)
図2 IT支出の増減に影響すると考えられる取り組みや事項(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 図2は、3つの進展段階に関する調査結果をまとめたものだ。棒グラフは、各項目の中堅・中小企業全体における回答割合を示す。これは、各項目が「IT支出の増減に影響する」と考えるユーザー企業の割合だ。

 折れ線グラフは、IT支出の増減見通しについて「増加」から「減少」を差し引いた値だ。これは、各項目が「IT支出の増加と減少のどちらに影響しているか」を示す。「プラス幅が大きい=IT支出を増やす要因」「マイナス幅が大きい=IT支出を減らす要因」ということになる。

 デジタライゼーションは、棒グラフの値が最も高いが、逆に折れ線グラフの値は2番目に低い。つまり、デジタル化の中ではデジタライゼーションが契機となりやすいが、IT支出の増加を伴う取り組みはデジタイゼーションかトランスフォーメーションに二極化していると考えられる。

 全てのユーザー企業が最初からトランスフォーメーションに着手することは難しい。デジタイゼーションの段階にある企業はデジタライゼーションにレベルアップすることが重要だとノークリサーチは指摘する。例えば、ペーパレス化で終わらずにデジタル化したデータを活用した業務フロー改善が考えられるとしている。

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