銀行業界の取締役会にはITの知識やIT関連の経歴を持つ役員が他業界に比べて少ない。他業界よりもITへの理解が低い経営陣がもたらす弊害とは。
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ここ10年間における銀行業務のデジタル化は目覚ましい。コンサルティング大手Accentureが2023年6月21日に発表したレポートによれば、金融業界全体で数十億ドルをIT費やしている。
にもかかわらず、銀行の取締役会は技術を導入するために必要な知識と理解が欠けている。
このレポートの基となる調査で、Accentureは世界の資産規模の大きな銀行106行で働く取締役1700人以上を分析した。その結果、技術的な専門知識を持つ取締役は全体のわずか15%であることが判明した。
Accentureのアンディ・ヤング氏(金融サービス部門の人材と組織構築のリーダー)は電子メールで「サイバーセキュリティやAI(人工知能)モデルのリスク、プライバシー設計など会社の収益に重大な影響を与え得る成長の機会と、それに伴うリスクの両面を慎重に考慮した上で、銀行の取締役会は優れた方法で技術投資と変革を行う責任がある」と述べた。
銀行経営幹部の専門知識は、銀行業務がハイテク主導のビジネスに移行した過去10年間で徐々に高まってきた。
冒頭で紹介したAccentureの調査が初めて実施された2015年当時、技術的な知識を有する銀行の経営幹部はわずか6%だった。2020年には銀行の取締役の10人に1人は技術知識を有するようになった。しかし、技術に関連する職歴を持つ取締役が1人もいない銀行は驚くほど多く、その割合は5行に1行以上だ。
Accentureが「CIO Dive」に語った内容によると、銀行業界は取締役会の技術的専門性という点で、他業界に比べてかなり低い。
Accentureのデブラ・マコーマック氏(取締役会の有効性と持続可能性のリーダー)は「1人の意見もないよりはましだが、取締役会における1人の技術的な意見は、しばしば形だけのものになりかねない。第二、第三の技術者の声を加えることで、役員室での会話が活発になり、情報に基づいた戦略的な意思決定が可能になる」と電子メールで述べた。
また、銀行業界では男女格差も根強い課題だ。女性が取締役会に占める割合は全体の4分の1強にすぎない。ただし、女性役員のうち3分の1は技術的知識を有している。
クラウドの利点はイノベーションと機敏性、さらにはセキュリティを促進するところにある。クラウドへの移行は、FinTechのスタートアップが急増と相まって、これまで保守的だった金融業界のモダナイゼーションを促進している(注1)。
金融事業を展開するCitigroupは2023年4月に開催された決算説明会で、同社の変革要員として8000人の技術者を迎えることを発表した。2023年1月〜同年3月31日までの3カ月間における同社の技術支出は2022年同期比で12%増加したと報告した(注2)。また、銀行持株会社JPMorgan Chase & Co.は同年6月第4週、組織全体にAI(人工知能)の導入を促すため、テレサ・ハイツェンレッター氏を最高データ分析責任者に任命した(注3)。
米財務省は、金融サービス部門におけるクラウド導入に関する2023年2月の報告書で、より広範な銀行業務のモダナイゼーションが進んでいることを強調した(注4)。同省は、クラウド事業の統合に対する懸念を表明する一方で、クラウドの導入が業界の技術コストを削減して、迅速なイノベーションを実現し、セキュリティと耐久性を高めたと認識している。
(注1)Banks, late to the game, double down on the cloud(CIO Dive)
(注2)Citigroup technology expenses grow as it pushes transformation(CIO Dive)
(注3)JPMorgan Chase appoints tech chief to lead AI adoption(CIO Dive)
(注4)US government weighs in on cloud adoption in banking(CIO Dive)
(初出)Bank execs lack tech knowledge needed to guide IT strategy
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