新技術導入におけるメリットとリスクを評価する際、CIOがどのような意思決定を下すかによって結果は大きく変わる。調査によると、意思決定においては“データ”だけでなく“直感”も重視されていることが分かった。
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コンサルティング企業のFT Longitudeが実施したKingsley Gateの新しい調査によると(注1)、経営幹部の半数近くが組織の意思決定プロセスに満足しておらず、4分の1以上が「意思決定方法への不満から退職を考えたことがある」と答えている。
さらに回答者のうち3分の1が、「意思決定のスタイルの不一致で退職した経験がある」と答えている。この調査は、2023年5〜6月に80人のテクノロジーリーダーを含む400人の経営幹部を対象に実施された。
調査によると、上級管理職はデータを基に意思決定を実施している一方、4分の3近くは個人の価値観や信念に頼っていることを認めている。また、5人に3人は直感が重要な役割を果たしていると認識している。
多くの企業では、エビデンスに基づいたデータ主導の意思決定が基本となっている。しかし多くの場合、最終的な意思決定を下す際には全ての数字はすでに何度もチェックされ、それぞれの潜在的なリスクと予想される利益をてんびんにかけている。そのときリーダーが必要とするのは、より多くのデータではなく、直感と経験だ。
CIO(最高情報責任者)は調達プロセスを通じて、ITベンダーや製品、サービスに関する情報をさまざまな情報源から収集していることが、Forresterの調査で明らかになった(注2)。同社によると、経営幹部は購買プロセスの最終段階において最も深く関わる傾向にあり、その際に直感のような非言語的要因が影響を及ぼしている。
新しい技術が購買プロセスを変えることはないかもしれないが、購入や導入の決断を大きく左右する可能性はある。
2023年3月にSoftwareOneが600人のITリーダーを対象に実施した調査によると、パンデミック中に企業がクラウドを求めて移行を急いだ結果、コストが抑えられず、技術的な負債が急増した(注3)。
現在、生成AI(人工知能)への関心が高まり、技術リーダーは現実的なデータのセキュリティリスクから(注4)、偏見や誤情報に関連したより抽象的な倫理的問題まで、新たに生じた重大な懸念に直面している。
「CIOやCTO(最高技術責任者)は、生成AIのような新たな技術に関する意思決定において、膨大な思考やデータに加えて直感が不可欠になるだろう」とKingsley Gateのシニアパートナーでグローバルテクノロジー部門のリーダーであるノーム・アイゼンバーグ氏は述べている。
生成AIは自社でモデルを構築するか、機密データを公開する可能性のあるツールをサードパーティーのベンダーに任せるか、という難しい決断をリーダーに迫っている、とアイゼンバーグ氏は言う。
それにもかかわらず、Kingsley Gateの調査によると4分の1の回答者が、「採用面接時に意思決定能力について聞かれなかった」と答えている。自分と組織の意思決定スタイルが一致していると感じているのは、わずか3分の1だった。
アイゼンバーグ氏は「対照的な意思決定プロセスは、必ずしも否定的なものではない。2人の人間が正反対のスタイルを持っていても、成し遂げようとしていることは一致しているケースもある。そのスタイルが正しく調和すれば、非常にポジティブなものになる」と述べている。
(注1)Bad Decisions: Why Companies Miss the Most Important Factor in Executive Hiring(Kingsley Gate)
(注2)What CIOs want from tech vendors before closing a deal(CIO Dive)
(注3)Technical debt migrates to the cloud(CIO Dive)
(注4)Generative AI worth a shot despite risks, execs say(CIO Dive)
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