中堅・中小企業が今、「会計管理製品」に求める機能は? ノークリサーチが調査

中堅・中小企業におけるERPの導入率が徐々に高まる中で、中堅・中小企業が多く利用してきた会計管理システムへのニーズに変化が起きている。AIを活用した製品も登場する中で、今求められている機能とは。

» 2023年10月31日 07時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 ノークリサーチは、業務アプリケーションの利用実態に関する「2023年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」から、会計管理に関する調査結果をダイジェストで紹介するレポートを2023年10月16日に発表した。

年商20〜100億円の企業で導入率が低下 その理由は?

 同調査は、国内全業種の年商500億円未満の中堅・中小企業1300社を対象に2023年7月〜8月に実施された。調査対象となった業務アプリケーションは「ERP」「生産管理」「会計管理」「販売、仕入、在庫管理」「給与、人事、勤怠、就業管理」「ワークフロー・ビジネスプロセス管理」「コラボレーション(グループウェア、ビジネスチャット、Web会議)」「CRM」「BI」「文書管理、オンラインストレージサービス」の10分野だ。情報システムの導入や運用・管理または製品、サービスの選定、決済の権限を有する職責者が回答した。

 会計管理は基本的な業務アプリケーションの一つで、その動向は中堅・中小企業のIT活用全般を把握する上で重要な指標となる。今回の調査レポートでは、年商500億円未満(年商規模を7区分に分けて集計、分析)の企業が自社の業務基盤として導入している場合の社数シェアを集計、分析した。

 グラフ1では、10分野の業務アプリケーションの社数シェアやユーザー評価を集計、分析した調査レポート「2023年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」の中から会計管理製品、サービスの導入済み社数シェア(複数回答可)が抜粋されている。

グラフ1 導入済みの会計管理製品、サービス(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 シェア上位5位には「勘定奉行」「GLOVIA」「SMILE」「弥生会計」「OBIC7」が挙がった。いずれも老舗ITベンダーの製品やサービスだが、「今後の新規導入やリプレース需要、運用形態(クラウド、オンプレミス)に着目すると、今後のシェアの行方を左右する留意点が見えてくる」とノークリサーチは指摘する。

 会計管理における「導入済み:継続」(導入済みで、現在のベンダーの製品やサービスを今後も利用)と「導入済み:変更」(導入済みだが、他ITベンダーの製品、サービスに変更する予定)の割合を年商別に集計したのがグラフ2だ。右端に黒太字で記載された数値は現時点の導入率を表す。

グラフ2 会計管理製品、サービスの導入状況(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 グラフ2から「年商20億円未満の企業は年商規模が大きくなるにつれて導入率が増加」「年商20〜100億円の企業は下位および上位の年商帯と比べて導入率が若干下がる」「年商100〜500億円では年商規模が大きくなるにつれて増加」という傾向が読み取れる。

 従来は年商100〜500億円の企業は会計管理システムの導入率は若干下がる傾向が見られた。ERPが会計管理の役割も担うようになるためだ。

 近年では年商20〜100億円の企業で個別の基幹系システムからERPにステップアップする動きがあることから、会計管理システムの導入割合はやや低下している。

 ノークリサーチは、年商100〜500億円の企業における会計管理の導入率が年商規模に伴って高まる要因の一つを「クラウド会計の併用だ」と指摘する。

 クラウド会計は年商5億円未満の小規模企業が主な顧客層と考えられがちだが、実際には年商100〜500億円の企業も利用していることが調査結果から確認できたという。年商規模が大きくなるにつれて発生する「拠点では簡易なサービスを利用したい」「さまざまな決済サービスと連携させたい」「海外展開にも対応したい」などのニーズに対応するためにはクラウド会計を併用するのが効果的だからだとノークリサーチは分析する。

今後伸びるニーズは「予算超過の自動通知」や「AI活用の監査支援/異常値検出」

 今回の調査レポートでは、会計管理製品やサービスに今後必要と考える機能や特徴について、以下のような選択肢を列挙した上で集計、分析を行った。

会計管理製品、サービスが今後持つべきだと考える機能や特徴の選択肢(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 グラフ3は、上記のうちニーズ項目の回答割合を「導入済み」(青帯)と「新規予定(導入予定)」(オレンジの帯)に分けて集計したものだ。青帯と比べてオレンジの帯が長くなっている項目が、今後の伸びが期待できる機能ニーズということになる。

グラフ3 主要な会計管理製品、サービスが今後持つべきだと考える機能や特徴(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 近年は「金融機関との与信連携」や「仕訳の自動化」といった財務会計寄りの機能がクラウド会計の差別化要素として注目を集めた。しかし、これら2項目のニーズが今後さらに拡大する兆候は見られない(グラフ3)。

 一方で、「予算超過の自動通知」や「AIを活用した監査支援、異常値検出」といった管理会計寄りのニーズが拡大すると予想される。

 「会計データを分析することで新しい価値を提供するという観点は同じでも、具体的なニーズは常に変化している点に注意する必要がある」とノークリサーチは指摘する。

 なお、今回の調査分析の対象となった会計管理製品、サービスは、以下の通りだ。ノークリサーチは過去の調査結果や最新の市場状況などを踏まえて選定したとしている。

今回の調査で選択肢とした会計管理製品、サービスの一覧。製品、サービスごとの評価や導入費用の集計、分析はサンプル件数が一定以上の条件(件数が少ない場合には参考値扱いとなるケースもある)を満たしたもの(※が付いている製品)を調査分析対象とした(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

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