中外製薬、Googleの医療用LLM「Med-PaLM 2」を採用 創薬プロセスの劇的改善を目指す

中外製薬はGoogleのLLM「Med-PaLM 2」を使って、治験文書の処理や臨床試験計画の迅速化に取り組む予定だ。臨床試験計画の作成にかかる時間の大幅短縮が期待されている。

» 2023年11月17日 09時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

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 Googleは2023年11月15日、中外製薬が新薬創出の促進に向けてGoogle Cloudの医療機関向け生成AI(人工知能)モデル「Med-PaLM 2」を活用すると発表した。

中外製薬は新薬創出の促進に向けてGoogle Cloudの医療機関向け生成AIモデル「Med-PaLM 2」を活用する(出典:GoogleのWebサイト)

中外製薬、“エキスパート”レベルのAI「Med-PaLM 2」で創薬を迅速化

 中外製薬は2019年からDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進してきた。2023年8月にはGoogle CloudのML(機械学習)やデータ分析機能を活用して創薬プロセスの迅速化を進めると発表している。

 従来の創薬のプロセスでは、病気の作用を抑える化合物やタンパク質の構造を研究し、蓄積されたデータを基に膨大なトライ・アンド・エラーを繰り返すことで候補薬の開発に取り組んでいる。この手法では新薬を1つ生み出すのに10〜15年の期間と3000億円以上のコストが必要とされていた。

 中外製薬は、DeepMind Technologiesが提供するオープンソースソフトウェア(OSS)「AlphaFold2」を活用することで1日に1000個以上のタンパク質構造を推論できるシステムを構築し、研究プロセスを数カ月単位で短縮、より多くの薬候補を創出することに取り組んでいる。

 AlphaFold2はタンパク質の構造を予測するためにDeepMind Technologiesによって開発された。タンパク質の3D構造を原子レベルで予測できるため、その方法論と成果は注目を集めている。同ツールは「GitHub」でOSSとして公開されており、さまざまな生物学的な問題解決に利用できるものとして期待されている。

 中外製薬が今回新しく採用したMed-PaLM 2は、米国医師国家試験で「エキスパート」レベルの成績を収めた大規模言語モデル(LLM)であり、難しい医学文章の内容を用いて質問に答えたり洞察をまとめたりできる。

 中外製薬はMed-PaLM 2を活用することで、自然言語でのやりとりによって治験関係文書の短時間検索・処理や、臨床試験計画に必要な情報を抽出できると説明している。その他、文書の作成を代行させることで、臨床試験計画の作成にかかる時間を大幅に短縮できるとしている。これらによってより迅速に臨床試験を開始し、創薬プロセスを短縮することが可能になるという。

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