AIを活用するビジネスを成功させるために企業は何をすべきか。ガートナーが「今後1〜2年の間に最優先課題として取り組むべきこと」を提言した。
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ガートナージャパン(以下、ガートナー)は2023年11月13日、「AI(人工知能)、特に生成AIの台頭が人間とマシンの関係を大きく変化させている」という見解を発表した。AIが単なる「ITツールの中で率先して取り入れるべきもの」から、「全社を挙げて優先的に進めるべき課題」に認識が変わるにつれて、CIO(最高情報責任者)をはじめとするITエグゼクティブにとって2つの重要領域が明らかになりつつあるという。
Gartnerのデーブ・アロン氏(ディスティングイッシュトバイスプレジデントアナリスト兼Gartnerフェロー)は、「生成AIは、単なるテクノロジーやビジネストレンドではなく、人間とマシンとの関係に重大な変化をもたらすものだ。その台頭に伴って、マシンは『人間の代わりに何かをするもの』から『人間と共に何かをするもの』に変わりつつある。人間にとってのツールから“チームメイト”へと進化しつつある。2030年までに、人間の80%はスマートロボットと日常的に関わるようになるとGartnerは予測している」という。
同氏は、AIを活用する時代におけるCIOの役割について次のように定義する。
「CIOは、人がAIをどのように形成し、AIが人をどのように形成するかについて、大事な役割を担っている。Gartnerの調査によると、世界のCEOの51%が、CIOなどのテクノロジーリーダーが生成AIへの取り組みを主導することを期待している」
今後1〜2年にCIOがAIの取り組みを主導するためには、「AIの活用機会を特定すること」と「AI-Readyになること」の2つの最優先課題に注力すべきだという。
1つ目の「AIの活用機会を特定する」について、ガートナーの片山博之氏(バイスプレジデントアナリスト)は「現在、AIの課題の一つになっているのが、変化が非常に早く、極めて複雑であることだ」と指摘する。
同氏によると、AIには主に次の2つの種類がある。
エブリデイAIとゲームチェンジングAIの活用機会は、「バックオフィス」「フロントオフィス」「新しいコア機能」「プロダクトとサービス」の4つの領域にある。CIOは、経営幹部のAIガイドとして、これらの領域で生成AIを使用する機会とリスクを検証することによって、CEOや他のCレベル幹部がAIの複雑さを克服し、AIに関する目標を設定し、企業におけるAIの活用機会を特定できるよう支援すべきだという。
片山氏は「AIは単なるITイニシアチブではなく、全社的イニシアチブとなる。AIの使い方を考えるときは、人間とマシンの関係から始めることが重要だ。成功に導くには、経営幹部全員の関与が必要だ。まずは、組織としてどこでAIを活用したいか、あるいは活用したくないかから議論を始めるべきだ」と提言する。
重要領域の2つ目となる「AI-Readyになる」についてアロン氏は次のように説明する。「AIが人間とマシンの関係を変革し続ける中で、CIOは変化の本質を積極的に形あるものにしなければならない。人間とマシンがやりとりするこの新たな時代には、多くの予期せぬ結果が待ち受けている」
アロン氏は、テクノロジーに関する意思決定は、もはやテクノロジーだけの問題ではないと説明する。「経済、社会、倫理に及ぶ意思決定となっている。CIOをはじめとするITリーダーは、組織内でAIに関する意思決定をかじ取りする上で、『灯台となる原則』、換言すれば、道を照らし、どのような人間とマシンの関係を許容するか、許容しないかを示すAIのビジョンが必要だ」(アロン氏)
ただし、Gartnerの調査によると、灯台となる原則やAIの明確なビジョンを持つ企業はほぼ存在しない。同社が2023年6月に606人のCIOやテクノロジーリーダーを対象に実施した調査によると、「AIビジョンステートメント」を策定している企業はわずか9%だった(日本の割合は7%)。また、世界のCIOやテクノロジーリーダーの36%は、「AIビジョンステートメントを策定する予定はない」と回答している。
こうした状況から、ガートナーは、今後1年以内に生成AIの迅速かつ安全な導入を促進するために次の3項目に取り組む必要があると指摘する。
アロン氏は、次のようにコメントした。「AI活用型ビジネスの時代に事前の計画策定を怠れば、意図せぬ結果が生じることになる。CIOには、あらゆるものが目新しく不透明に見えるときでも、前途を照らす手段が必要だ。CIOがこのディスラプションを安全に活用するためには、CEOや他のCレベル幹部と連携して、エブリデイAIやゲームチェンジングAIを利用する目的を明確にし、AI-Readyになるための原則やデータ、セキュリティを確立しなければならない」
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