“「単線」から「東京メトロ」へ”ってどういうこと? 生成AI搭載でプロセスマイニングはこう変わる

プロセスマイニングツール「Celonis」は生成AIを搭載することでどう変わるのか。イベントで言及された「東京メトロ路線図」とプロセスマイニングツールとの共通点とは。

» 2023年12月13日 13時30分 公開
[田中広美ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 「生成AI(人工知能)を搭載することでプロセスマイニングは『単線』の路線図から『東京メトロ』の路線図に変わった」――。生成AIを搭載したソリューションが次々に市場に投入される中、生成AIによる変化を示す数多くの言葉がメディアを賑わせている。こうした中でインパクトのある表現がCelonisのイベントで紹介された。

「単線」から「東京メトロ」へってどういうこと? 生成AI搭載による変化

 プロセスマイニングのソフトウェアを提供するCelonisは、ドイツで開催した年次ユーザーカンファレンス「Celosphere 2023」(2023年11月14〜15日《現地時間》)のダイジェストを日本のメディア向けに紹介する「The Best of Celosphere 2023 Japan」を2023年12月7日にオンラインで開催した。

 冒頭の言葉は、Celonisのパートナー企業でありユーザー企業でもある富士通の福田 譲氏(CIO《最高情報責任者》兼CDXO)が、Celonisが提供する業務プロセス分析技術「Process Intelligence Graph」(PI Graph)について述べたものとして紹介された。

 生成AIによる分析を可能にするPI Graphによってプロセスマイニングはどう変わるのか、具体的に見ていこう。

 Celonisの日本法人社長を務める村瀬将思氏は、プロセスマイニングの重要性について、「平和な時代、フラットな時代は終わった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やロシアとウクライナの戦争、そして生成AIの登場など変化の速度が速くなっている中で求められるのはデジタルファーストだけでない。プロセスファーストで最も価値を多く創出する手段が求められている」と強調した。

 同氏によると、現在の企業には業務プロセスにおいて大きな課題がある。営業部門は「SAP」「Salesforce」、物流部門は「Oracle」、財務部門は「Workday」といったように、部門によって異なるシステムを利用しており、データ連携が不十分であるため、「共通言語を持っていない状態だ」(村瀬氏)

 これまでのプロセスマイニングでは部門ごとにデータモデルを定義し、プロセスを特定する発注番号や請求番号などのケースIDを特定してデータを抽出していた。部門ごとにプロセスを可視化していた。

 各部門のデータをまたぐ「共通言語」がないため、「製品が納品されたのに、取引先から入金されていない」などのトラブルが起きた際は、各部門でプロセスをさかのぼり、「どこで何が起きたのか」を突き止める必要があった。

 それに対して、次世代のプロセスマイニングである「Object centric process mining」は、ケースIDを必要とせず、業務プロセスのオブジェクトを多面的、横断的に分析する。

次世代のプロセスマイニング(出典:Celonisの提供資料) 次世代のプロセスマイニング(出典:Celonisの提供資料)

 これを可能にするのが「Celosphere 2023」で発表されたPI Graphだ。PI Graphが「共通言語」としてさまざまなシステムに蓄積されたデータソースを扱うことで、これまで困難だった部門をまたいだプロセス解析からプロセス改善、プロセスモニタリングが 可能になる。APIで連携することでサードパーティーAIやアナリティクスといった外部プラットフォームやソリューションも利用できる。

PI Graphの概要(出典:Celonisの提供資料)PI Graphの概要(出典:Celonisの提供資料)

 冒頭で紹介した福田氏のコメントは、PI GraphがCelonisプラットフォームに組み込まれたことで、企業で利用されている複数のシステムにまたがってエンドツーエンドでプロセスを可視化してプロセス改善に取り組めるようになったことを受けた発言だ。

 村瀬氏は「これまでプロセスマイニングは各部門のプロセスを対象としていた。鉄道で言うと、いわゆる単線だった。PI Graphは複数部門にまたがって、東京の地下鉄のように複雑なプロセス全体を扱うことができる」と、福田氏が「Celosphere 2023」で語った言葉を紹介した。

 また、生成AIを利用したPI Graphが搭載されたことで、プロセスの中で改善する必要のあるポイントをどう探すか、改善するためにどのような手段が考えられるかを考案する作業の在り方も変わるという。

 Celonisによると、PI Graphは鉄道の乗換案内アプリのように利用できる。「昔は路線地図を見て目的地に行くためにどこで乗り替えるかを確認する必要があった。乗換案内アプリが登場してからは、始発駅と目的駅を入力すれば、どのルートが最も早く移動できるか、改札が近い車両はどこかを教えてくれる。PI Graphもまさに同じように業務の最適化に導くものだ」(村瀬氏)

 村瀬氏の言葉を裏付けるように、デモでは自然言語で語り掛けることで、PI Graphが統一された業務プロセスに存在する「詰まり」を発見してリスト化し、「詰まり」を改善するための提案をまとめて自然言語で回答する様子が披露された。

 なお、目的によって使い分けられる2つツールが提供されている。

  • Process Explorer: 探索型分析。特定の状況下でプロセスがどのように機能するかを探索する
  • Process Adherence Manager: あるべきプロセスにフォーカスしたモデル駆動型の分析。あるべきプロセスを定義して、機能しない箇所を確認する

 PI Graphの他に紹介された改善点や新機能としては、「Studio機能」の改善によってダッシュボード作成にかかる時間が短縮され、「Transformation Hub」によってプロセス改善の取り組みによって生み出された「価値」をモニターしてレポートすることが可能になった。

 なお、村瀬社長は、日本における目標として「日本市場でCelonisを売ることも重要だが、日本のお客さまがCelonisによって創出する価値を100億円に到達させたい。これを数年で成し遂げたい」と語った。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ