2023年の富士通はどうなる? 「フジトラ」推進で見えた課題と手ごたえ――福田EVPに聞くWeekly Memo(1/2 ページ)

2年半前から全社でDXに取り組む富士通の進捗はどうか。2022年までの同社の施策を振り返り、今後の展望を福田EVPに聞いた。そこから見えた、企業におけるDXの3つのポイントとは。

» 2023年01月16日 18時30分 公開
[松岡功ITmedia]

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筆者のインタビューに答える富士通の福田 譲氏(EVP CIO CDXO補佐)

 「IT企業からDX企業への変革」を掲げて、2020年7月から全社のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む富士通。一般に広く知られる日本企業の挑戦という意味でも注目される。2年半たった今、その進捗(しんちょく)はどうか。同社の取り組みから見えてきた企業DXのポイントとは何か。富士通のDXの推進役を担う福田 譲氏(EVP CIO CDXO補佐)にインタビュー取材する機会を得たので、同氏の話を基に2023年における取り組みと企業におけるDXの今後について考察したい。

DXの最大の敵である「経路依存性」とは

 まずは富士通のDXの取り組みを見ていこう。

 同社はDXについて、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務プロセスや組織、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義している。すなわち、DXは経営改革そのものということだ。

 その内容は、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」という同社のパーパスの実現に向けた「4つのX」からなる。4つのXとは事業を変革する「CX」、マネジメントを変革する「MX」、日々の仕事のやり方(オペレーション)を変革する「OX」、人・組織・カルチャーを変革する「EX」だ(図1)。そして、これらを効率よく合理的に進めるためのデジタルやIT、データの整備と活用を行う「IT改革」も要素として加わる。これが、「富士通のDXの全体像」(福田氏)である。

図1 富士通のDXの全体像(出典:富士通の提供資料)

 福田氏はこの全体像を説明したところで、「DXを2年半進めて明確になったのは最大の敵が『経路依存性』だということだ。当初から仮説として挙げていたが、再確認した」と述べた。経路依存性については、「組織の仕組みがガッチリと合理的にかみ合っている中で、仕組みの一部だけを変えようとしても無理だ。(過去の施策において、富士通だけでなく)日本企業は一部分だけ変えようとして失敗してきた」と説明し、それを打破するためには「今まで最適化されてきた会社の仕組み全体を『未来に最適化』する。その上で、トップの強力なリーダーシップの下、経営チーム全員で意識を合わせて一斉に取り組む」ことが肝要だと強調した。

 富士通が推進してきたDXプロジェクト「フジトラ」(図2)はこの経路依存性の課題にも有効だという。打破するための。経営チームからなる「ステアリングコミッティ」(現在10人)が意思決定を行い、「DX Designer」(同専任25人、兼任30人)がPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)組織として機能し、各組織のDX責任者からなる「DX Officer」(同47人)が事業組織を越えて連携しながら各プロジェクトを進めるといった格好だ。

図2 DXプロジェクト「フジトラ」の推進体制(出典:富士通の提供資料)

 さらに、フジトラの活動に自ら手を挙げて参加する従業員からなる「DXコミュニティ」も8000人を超えた。福田氏はこれについて、「富士通グループ全従業員12.4万人のうちの8000人なのでまだまだこれからだが、一方で、私が何か提案すると短時間で続々と意見が寄せられる8000人のパワーを実感している」と、課題と手応えの両方を感じている様子だ。

 富士通のDXの推進体制のポイントは、図2右側に記されている「経営のリーダーシップ」「現場が主役・全員参加」「カルチャー変革」の3つだという。

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