新団体の活動計画については、「産学連携でユースケースの収集と知見化を進めながら、活用促進と社会提言を行っていく」(宮田氏)とし、活動テーマとして「1.先端技術の共有と連携」「2.ビジネスユースケースの共有と実装支援」「3.Labを起点にした共創・協業」「4.教育・学び」「5.生成AI活用のルール作り・提言」の5つを挙げた(図4)。
筆者の見立てでは、この中で新団体の活動ぶりを内外に広く知らしめるテーマになりそうなのが、2番目と5番目だ。2番目のビジネスユースケースの共有と実装支援については、そのノウハウが新団体ならではのナレッジとして蓄積され、広く活用される可能性があるからだ。5番目の生成AI活用のルール作り・提言については、社団法人としてユーザー視点の提言をどんどんして世の中にアピールしていけば、存在感を高められるのではないか。
1番目と3番目についても、前出のクラウドサービスベンダー大手4社のノウハウを選んで利用できるのは大きな魅力だ。
具体的な内容として、2番目の例を示しておこう。ビジネスユースケースの供給については、ビジネスユースケースを基にした、業界横断で共通して利用できる活用方法作りと各業界への展開が挙げられる。社会実装の共有と支援については、実装のための技術的な知見共有や、社会実装する際に発生する課題解決の検討・支援が挙げられる(図5)。
宮田氏は最後に、「生成AIの登場は人類にとって大きな変化をもたらし、ビジネスや学び、働き方自体にも大きな影響を与える存在になる。そして、『価値の高い問いを立て、真に進むこと』がより重要とされる世の中になっていく。新団体では、有識者や先端企業の専門家が未来の社会に対して問いを立てながら、企業活動において安全に生成AIの活用を推進し、日本社会全体の発展に貢献することを目指したい」と述べて締めくくった。
新団体は、果たして日本の企業や行政の生成AI活用に大きなインパクトをもたらす存在になるか。会見終了後、理事の1人に聞いたところ、「各業界を代表する企業が会員となり、業界ごとに共創してユースケースを広げる流れができれば、大きなインパクトになる。そうなることを大いに期待している」との見方を示した。つまりは、そうした流れを起こしていけるかどうかが、新団体の存在感の大きさを決定づける動きになりそうだ。引き続き、注目したい。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.