ユーザー企業の連携は生成AIの活用を促進するか? 宮田裕章氏の発言から考察Weekly Memo(1/2 ページ)

ユーザー企業を主体とした産学連携の新団体「Generative AI Japan」が発足した。日本の企業や行政の生成AI活用に大きなインパクトをもたらす存在になるか。

» 2024年01月22日 15時50分 公開
[松岡功ITmedia]

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 産学連携での生成AI(人工知能)活用を目的にした団体がこのほど発足(注1)した。今後、ITとデジタル業界をけん引するであろう生成AIについては、すでに幾つかの推進団体が存在するが、ユーザー企業を主体とした大規模な団体が日本で初めて誕生した格好だ。果たして企業や行政の生成AI活用に大きなインパクトをもたらす存在になるか。

ユーザー企業を主体とした生成AIの活用促進団体が発足

 その団体とは、一般社団法人「Generative AI Japan」だ。ベネッセコーポレーションとITコンサルティングサービスを提供するウルシステムズが共同発起人となり、2024年1月9日に登記し、同月17日に都内で設立記者会見を開いた。

 代表幹事に就任した慶應義塾大学医学部 教授の宮田裕章氏は、同団体設立の目的について次のように説明した。

Generative AI Japan代表幹事に就任した慶應義塾大学医学部 教授の宮田裕章氏

 「生成AIは世界の全てを変えていくだろうと期待されている。だが、できることとできないことに関して混乱も起きている。そうした中で、新団体はまさに分野を超えて集まり、共に未来を考えていく。しかもこれまでの延長線上ではなく、未来が生成AIを前提にしてどう変わっていくかを見据え、それに向けて何が必要なのか、何ができるのかを共に考え、具現化できるように活動したい」

 ちなみに、同団体のロゴマークも生成AIで作成したそうで、「さまざまなところから来た道が交差しながら、多様な未来を切り開くという意図を込めた」(宮田氏)とのことだ。

 一方で、宮田氏は「生成AIを活用していく上でのさまざまな課題は、1社だけでは解決が難しい。他の企業や団体との協業・連携が必要となる」と指摘。そうした形で解決すべき主な課題として、「生成AIに関するリテラシーの底上げ」「生成AI活用を前提としたキャリア・働き方」「企業・ベンダー間の協業・共創」「生成AI活用のルールと共通認識」といった点を挙げた(図1)。

図1 生成AI活用における課題(出典:Generative AI Japanの会見資料)

 その上で、同氏は新団体設立に向けた思いを次のように述べた。

 「生成AI活用をさらに進めるためには、教育やキャリア、協業・共創、ルール作りなどのテーマにおいて、多くの企業・団体と連携し、共に課題を解決できる枠組みが必要だ。生成AIをテーマに日本の産業界をつなぐ団体を設立し、国や公的機関に提言することで、一部の生成AI企業だけではなく、日本全体の産業競争力を高めていきたい」

 新団体の理事には、生成AI活用を支援する企業や大学などから図2のように16人が就任した。活動の原動力となる会員も発表時点で図3に示す企業が名を連ねており、「これからもっと会員数を増やして活動を広げていきたい」(宮田氏)としている。

図2 Generative AI Japanの理事・監事メンバー(出典:Generative AI Japanの会見資料)

 図2の理事のメンバー企業で注目されるのは、グローバルでハイバースケールのクラウドサービスを提供するAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Google Cloud、Oracleといった大手4社の日本法人が名を連ねていることだ。まさしくこの新団体が、図3に名を連ねる企業のユーザー視点をベースにしている証左といえるだろう。

図3 Generative AI Japanの初期会員(出典:Generative AI Japanの会見資料)
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