従業員の経験や熟練度に依存するところの大きい需要予測。AIを利用したシステムを自社開発したことで、オイシックスは需要予測の“幅”を広げ、予測誤差率を改善したばかりか、「売るための仕掛けを考える時間」も確保できたという。
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オイシックス・ラ・大地は2024年1月15日、自社開発したAI(人工知能)を利用した「需要予測システム」によって、調達における予測誤差率を20.2%に改善したと発表した。
需要予測システムは、同社が展開する食品宅配サービス「Oisix」の需要を予測するシステムだ。同社のデータ活用組織「Data Management Office」(以下、DMO)が開発し、2023年11月に社内ローンチした。
食品業界、特に青果流通では生産から販売、配達に至るまでの中間流通における介在者が多い。デジタル化やシステムの連携が難しいため、データの分断やサイロ化が起こりやすく、デジタルトランスフォーメーションが遅れているのが現状だ。
情報流の分断によって、共有されるのは最新ではない実績データや需要予測・発注数で、上流で必要な情報が共有されないケースも多い。「結果としてサプライチェーンでのロスが大きくなるといった課題が生じている」とオイシックス・ラ・大地は説明する。
需要予測システムは、こうした課題の解消を目的として開発された。過剰発注の減少による食品ロスの削減や、商品の売り切れの減少による顧客満足度の向上を目指す。Oisixの主力商品であるミールキット宅配サービス「Kit Oisix」の需要予測に適用した。
同システムの導入前は、需要予測は担当者が一定のデータと経験値を基に予測していたため、考慮の幅に限界があったという。予測には時間を要するため、本来必要な「売るための仕掛けを考える時間」が削られていたのも課題だった。
需要予測システムは顧客の行動や購買データ、レシピデータ、販促データなどをAIに学習させることによって順調に改善率を上げた。ローンチ後1カ月には、予測誤差率20.2%の改善(旧ロジックと新ロジックにおける相対改善率)につながった。
需要予測システムの導入によって最適値での発注が可能になったことで、欠品率と在庫回転率も改善した。欠品率の改善については、買いたいものが売り切れの状態でなく購入できるようになり、顧客体験の向上につながったとしている。購入の機会損失を抑制することで売り上げ向上にも寄与する。在庫回転率の改善については、売り切るための販促費や物流コストが削減されるだけではなく、フードロスの削減にも寄与するとしている。
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