図4は、重点的に投資しているテクノロジーを聞いたものだ。注目すべきは、平均選択数(右上)における日本(2.7)と米国(4.0)の違いだ。これは取りも直さず、米国企業がより多くのテクノロジーを投資対象にしていることを示している。一方の日本企業は「クラウド」や「AI(人工知能)/機械学習」をはじめとする左側に寄っている。このグラフはデジタル経営の成熟度を表しているともいえそうだ。
図5は、デジタル経営およびDXの取り組み状況別にビジネス部門における人材確保の方針を聞いたものだ。このグラフから読み取れるのは、日本企業のデジタル人材育成は既存従業員の再教育が中心で、外部からの採用や買収などを活用する米国企業とは異なるということだ。日本の労働市場の状況を考えると、今後はより幅広い人材調達戦略が求められるだろう。
図6は、日本企業のデジタル経営およびDXに向けた組織文化について聞いたものだ。組織文化に関わる項目に下線が入っている。「全体」における各項目の割合を見ると、組織文化の変革が必要だという意識は高まっていないようだ。ただ、「ビジネス戦略と一体化」している企業には、ここでも強い変革意識が見て取れる。
こうした調査結果を踏まえ、JEITAでは次の3つを提言している。
最後に、上記の3つ目の提言に関連して筆者の考察を述べたい。
グローバルな視点やスピーディーな意思決定など、米国企業のビジネススタイルの良いところは日本企業も積極的に取り入れていくべきだ。一方で、日本企業の製造や顧客サービス、言い換えると「ものづくり」や「おもてなし」では世界からも評価されている。これらはデジタルによってさらに進化する領域だ。
これまではそうした強みを「日本型」と称して、同じ日本企業に売り込もうとしていた。そうではなく、「日本発」でどんどん世界に売り込めばいいのではないか。ものづくりやおもてなしはグローバルでもデジタル化のニーズがあるはずだ。日本企業が日本発の発想で世界をリードできる大きなチャンスが来たと捉えようではないか。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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