クラウド化が進む今こそ考える、ERP導入のメリットと課題(1/2 ページ)

ERP導入のメリットとデメリットについては既に十二分に取り上げられている。しかし、クラウド移行によってERPの性質は変わりつつある。本稿ではクラウド時代におけるERPの利点と課題をまとめなおす。

» 2024年03月27日 10時00分 公開
[Kevin FergusonTechTarget]

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 ERP導入のメリットとデメリットについては、既に十二分に取り上げられている。しかし、企業がクラウド移行し、自宅での運動や食料品の買い出し、車での移動といった、生活のほぼ全ての側面からデータが収集、保存、分析され、意思決定の基準になるに従ってERPの性質は変わりつつある。

 こうした変化を支えるのに必要な投資の内容にも変化が起きている。ERPの良い点と悪い点を改めて考えてみることには、それなりの価値があるといえるだろう。

ERP導入のメリットとは

 ERP導入のメリットは以下の通りだ。

リアリティーチェック(実態調査)

 企業がERPシステムを検討する際に確認しなければならないのは既存のシステムだ。社内のさまざまな部門がアプリケーションやシステムを独自に調達しているケースも多い。シャドーITと呼ばれるこうした製品は効率を悪化させ、相互運用性を損なう。

 自社のソフトウェア戦略にこうした弱点があると分かれば、改善への筋道を描くことも可能だ。リアリティーチェックの最大のメリットは、企業がITと各部門の結び付きを改善する機会を得られる点にある。中には、IT部門の従業員を特定の事業部門に常駐させ、当該部門がどのように機能しているのか、何がネックになっているのかをより正確に把握できるようにしている企業もある。

ITコストの削減

 コストの削減はすぐに達成できるものではない。ERP導入は多額の投資を伴う上に時間がかかる。しかしERPを使う方が、人事や財務管理、サプライチェーン管理などのシステムを個別に利用するよりも低コストだ。ライセンスや研修、サポートにかかる費用を抑えられる可能性もある。

エンド・ツー・エンドの可視化

 ERPの最も魅力的な特徴は、ハイレベルの意思決定を担う者が業務の実態をリアルタイムで把握できる点にある。データが実際の行動につながるビジネスインテリジェンス(BI)を提供してくれる。例えば、日次の在庫水準に一定のパターンがある場合は、サプライチェーンを調整して、製品や在庫水準、在庫が確保されるタイミングと場所を最適化できる。こうしたデータを単一のダッシュボードで一覧できれば、ワークフローの効率化や従業員の生産性向上に大いに役立つ。

計画策定とレポートの作成

 ERPによってデータを可視化できれば正確なレポートを即座に作成可能になる。複数の事業部門が同じデータを確認できるため、管理職も認識を共有できる。スプレッドシートや電子メールの重複による認識の食い違いや、問題発生時の犯人捜しといった無駄を低減できる。一般的なERPには、財務をはじめとするレポート作成ツールが組み込まれている。自社のデータを深掘りして分析するBIアプリケーションを提供するツールもある。

 ERPのBI機能や自動レポーティング機能は、企業のコンプライアンス推進にも役立つ。多くの財務ERPにはさまざまな規制に対応するコンプライアンス機能が組み込まれている。

 EU一般データ保護規則(GDPR)や、医療保険の携行性と責任に関する法律(HIPAA)、クレジットカード業界のセキュリティ基準(PCI DSS)、サーベンス・オクスリー法(SOX法)、米国立標準技術研究所(NIST)が推進するドラフト版のセキュアソフトウェア開発フレームワーク(SSDF)といった規制などがある。

データセキュリティ

 データセキュリティの確保にはメリットとデメリットの両面が存在する。自社データを集中保存するリポジトリの管理には神経を使うが、ERPやそれをホストするサービスプロバイダーは、オンプレミス型のERPを自社でホストする企業よりも優れたデータセキュリティ体制を整えていることが多い。

 ERPでは、人事や財務といった一般的なビジネスプロセス用のモジュールが連係し、中央リポジトリにデータを保存する。

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