デジタル化が遅れる鉄鋼業界で、伊藤忠丸紅鉄鋼がITを利用した業務改革を進めている。草の根的な活動から始め、現在では約200個のアプリを開発した同社の取り組みとは。
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伊藤忠丸紅鉄鋼は、草の根的な活動から業務改革を始め、年間約800時間の工数削減を実現した。デジタル化の遅れが目立つ鉄鋼業界の中で、同社はどのように業務改革の風土を作ったのか。
2つの総合商社の鉄鋼部門が分社、統合して2001年に設立された伊藤忠丸紅鉄鋼は、鉄鋼製品の輸出入や三国間取引をはじめとしたトレーディング、国内外の鉄鋼関連事業投資などを展開している。
同社は経営戦略人総本部の傘下にデジタル戦略室を設置し、CDO(最高デジタル責任者)を中心に業務改革やデジタルリテラシー向上、ペーパーレス化などの施策に取り組んでいる。中でも大きなテーマが事業会社との緊密な情報共有だった。
イントラネットを中心とした情報基盤を使っていたが、現場からは「情報共有を密にしたい」という要望が寄せられていた。そこで業務改革やペーパーレス化と合わせて取り組むことになった。
まずはアジャイル的なアプローチを取り入れながら環境づくりから始め、現場で開発できるノーコード/ローコードツールを検討することになった。
伊藤忠丸紅鉄鋼が最終的に選んだのが、サイボウズのノーコードツール「kintone」だった。導入当初はkintoneアプリの開発をSIerに委託していたが、要件確認などのやりとりに時間がかかることから、サイボウズのオフィシャルパートナーであるコムチュアの伴走型支援を受けつつ自社開発することにした。
現在は、開発パートナーの協力を得ながら、IT推進部がアプリを開発している。ワークフロー系を中心にSAPの基幹システムと連携するアプリや案件情報、顧客情報などの情報共有系のアプリを中心に合計約200個を開発した。
約100社から構成されるグループ全体を対象に実施するアンケートに利用するアプリも作成した。以前は各社から電子メールで送付される「Microsoft Excel」のデータを手作業で集計していたが、kintoneアプリへの移行後は集計が容易になり、作業時間も短縮された。回答者に対して、会社や従業員ごとに詳細な権限管理が実施できるのも便利だという。
kintoneでマスタ設定することで表記揺れがなくなり、精度の高い情報を入手できるようになった。複数言語に対応したり、前回調査から流用可能な部分はコピー&ペーストできたりするなど回答者にとっても使いやすくなったという。
伊藤忠丸紅鉄鋼はkintoneを次のように利用している。
同社は、kintoneによって情報の一元化や情報共有の円滑化や業務の可視化、ミス撲滅、ペーパーレス化、引き継ぎ業務の簡素化などが実現したとしている。
伊藤忠丸紅鉄鋼は業務改善進めるために「BPR Cup」を開催している。kintoneなどのツールを駆使して実施した改善事例を各部署が報告し、優秀な事例は表彰される。kintoneを使った業務改善としては、顧客管理や商談管理にkintoneを使って年間約800時間の工数削減を実現した事例が表彰された。
今後はkintoneとコラボレーションプラットフォームの「Microsoft Teams」や電子メール、業務自動化ツール「Power Automate」などの周辺システムとの連携をワークフローアプリを使って進める考えだ。グローバルを含めたグループ会社でもkintoneアプリの開発を進めていく。
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