良きペネトレーションテスターになるために必要な5つのスキル 報告書作成のコツセキュリティニュースアラート

ペネトレーションテスターには技術的なスキルはもちろん、テストの結果を効果的に使うための報告書を作成するスキルが求められる。本稿はペネトレーションテスターに求められるスキルとよくある間違いをまとめる。

» 2024年04月03日 07時30分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

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 Offensive Securityは2024年4月1日(現地時間)、ペネトレーションテスター(侵入テスト担当者)のスキルとして「報告書の作成スキル」の重要性を指摘した。

ペネトレーションテストの成功を左右する 効果的な報告書の作成方法とは?

 ペネトレーションテスターは制御下のコンピュータシステムやネットワーク、アプリケーションに対して模擬的なサイバー攻撃を実施し、脆弱(ぜいじゃく)性と弱点を特定する。このためペネトレーションテスターの作業の多くは本質的には技術的なものだが、そのテストの結果を効果的に使うには組織が脆弱性を理解して修正できるように適切な報告書を作成する必要があるとし、リスクの発見と同じくらい重要だと指摘している。

 報告書の作成がペネトレーションテスターにとって重要なスキルである理由として以下の5項目が挙げられている。

  1. 調査結果の文書化: ペネトレーションテスターは特定された全ての脆弱性やそれらを悪用するために使用される方法、組織への潜在的な影響を文書化する必要がある。この報告書はリスクレベルを理解し軽減戦略を計画するのに役立つ
  2. さまざまな利害関係者とのコミュニケーション: ペネトレーションテスターは技術チームや経営陣、外部の利害関係者など、さまざまな対象者に調査結果を伝える必要がある。報告書は明確かつ簡潔で技術的な詳細と技術に詳しくない読者に適したハイレベルな概要の両方を提供する必要がある
  3. 実行可能な推奨事項: ペネトレーションテスターは脆弱性を特定するだけでなく修復のための実用的な推奨事項を提供する必要がある。適切に記述された報告書には組織が最も重要な脆弱性に最初に対処する際の指針となる、優先順位付けされた推奨事項が含まれている
  4. コンプライアンスと法的要件: 多くの組織は業界の規制や標準に準拠するために定期的な侵入テストを実施する必要がある。コンプライアンスを実証するには詳細な報告書が必要であり監査中に精査される場合もある
  5. 継続的な改善: 報告書は組織のセキュリティ改善を経時的に追跡するための記録としても機能する。調査結果と修復作業を文書化することで組織はセキュリティ体制の強化の進捗(しんちょく)状況を監視できる

 ペネトレーションテスターが作成する報告書においてよく見られる間違いや正しいアプローチとして以下の項目が挙げられている。

  • ペネトレーションテスターは過度に技術的な言葉の“わな”に陥ることが多く、技術者以外の関係者を遠ざける可能性がある: バランスを取り、技術チームを導くのに十分な詳細を提供するとともに、リスクと影響を平易な言葉で要約してより広い理解を得ることが重要となる。こうしたアプローチによって技術的な背景に関係なく全ての利害関係者が調査結果の重大度と行動の必要性を把握できるようになる
  • 脆弱性に関する十分なコンテキストや詳細を提供していない: 潜在的なビジネスへの影響を詳しく説明せずに問題をリストアップするだけでは、利害関係者は最も重要な脅威に優先順位を付けて効果的に対処できなくなる。各脆弱性が組織に現実的にどのような影響を与えるかを明確にし、それによってリスク管理とリソース配分のためのより多くの情報に基づいた意思決定プロセスを可能にすることが大切になる
  • スクリーンショットやログなどの十分な証拠に裏打ちされた調査結果を提示していない: こうした証拠が掲載されていなければ利害関係者は報告された脆弱性の深刻度や信ぴょう性を評価するのが難しいと感じる可能性がある
  • 調査結果の優先順位付けと実行可能な推奨事項が欠けている: 利害関係者はどの脆弱性が最大のリスクをもたらすかやそれらを効果的に修正する方法について明確なガイダンスを必要としている。この方向性を示さないとセキュリティ対策リソースが不適切に浪費される可能性がある
  • 不正確さや校正の欠如が報告書の信頼性を著しく損なう可能性がある: 誤解を招く情報や誤植は報告書の専門的な品質を損なうだけでなく、組織のセキュリティ体制の誤った評価につながる可能性がある。報告書は綿密にレビューし、正確性と一貫性を確保して信頼を維持することが大切といえる

 Offensive Securityはペネトレーションテスターが報告書を作成する際のヒントとして以下の項目を紹介している。

  • エグゼクティブサマリー: 主要な調査結果やリスク、推奨されるアクションを概説した簡潔なエグゼクティブサマリーから始める。意思決定者が技術的な詳細を掘り下げることなく重要なポイントを理解できるようになる
  • 検出結果の優先順位付け: 検出された脆弱性を潜在的な影響と悪用の可能性に基づいて重要度順にランク付けする。これによって企業はどの問題に最初に対処するかの優先順位を付けられる
  • 明確で簡潔な言葉を使う: 平易な言葉で書き、必要でない限り過度な専門用語は避ける。専門用語を使用する場合は技術者以外の読者が報告書にアクセスできるように明確な説明または定義を明記する
  • 詳細な技術情報を提供する: 技術チームには脆弱性の詳細な説明や発見方法、概念実証、ビジネスへの潜在的な影響を含めて情報を示す。この技術的な詳細は脆弱性を理解して修正するために必要になる
  • 実行可能な修復手順を提供する: 脆弱性ごとに修復のための具体的で実行可能な手順を提供する。このガイダンスは技術チームが特定された問題に効果的に対処するために重要になる
  • 必要に応じてビジュアルを使用する: グラフやスクリーンショットを組み込んでポイントを説明することでデータをより理解しやすくする
  • リスク評価を含める: リスク評価マトリックスを利用して各脆弱性の重大度と可能性を示す。この視覚的表現は対応作業の優先順位付けに役立つ
  • レビューと校正: 報告書にエラーや曖昧さがないことを確認する
  • 標準化された形式に従う: 全ての報告書に一貫した形式を使用する。標準化によって読者は必要な情報を素早く見つけられ、報告書の構造を理解しやすくなる
  • フォローアップアクションとタイムラインを含める: 脆弱性に対処していることを確認するために再評価またはフォローアップテストのタイムラインを提案する

 最近は動的でインタラクティブ性を求める傾向が強いため、報告書のメディアについては、従来のPDFやDOC形式だけでなくオンラインプラットフォームとダッシュボードに基づく報告ツールの使用が増加している点についても言及している。

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