「SCMのパナソニック コネクト」になれるか? 新たな買収で攻勢をかける同社の野望Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2024年04月08日 14時35分 公開
[松岡 功ITmedia]
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「サプライチェーンのパナソニック コネクト」と呼ばれるか

 以上が、樋口氏の説明を基にした今回の発表の概要だ。サプライチェーン分野の事業拡大に向けたパナソニック コネクトのさらなる攻勢の動きをどう見るか。

 筆者が感じたのは、パナソニック コネクトがBlue Yonderを通じて買収したのは、ワンネットワークというサプライチェーン関連企業にとどまらず、ワンネットワークのプラットフォームを生かして「サプライチェーン業界」そのものを対象にしたということだ。「圧倒的なゲームチェンジャーになり得る」と表現したのは、買収の対象が企業というより「業界」だからだろう。

 確かに業界をネットワークでカバーできれば、ガリバー的な存在になり得るが、ポイントになるのはカバー率とアクティブ率だ。樋口氏によると、グローバルのサプライチェーン分野におけるワンネットワークの接続企業数は「トップレベル」というが、国・地域によっても業種によっても異なる広大なサプライチェーン分野からすると、それほど高いカバー率はなかなか獲得できないのではないか。また、ワンネットワークの接続企業数15万社の中で、アクティブなサプライヤーは4万9000社超だという。このカバー率とアクティブ率は、すなわちパナソニック コネクトのサプライチェーン業界への影響力に直結する話だ。

 とはいえ、サプライチェーン業界に対して同様のアプローチで動く企業がなければ、パナソニック コネクトの存在感が今後、グッと高まる可能性は大いにある。

 もう一つ、筆者が今回の動きで感じたのは、パナソニック コネクトのサプライチェーン分野への執着と意気込みだ。冒頭で紹介した樋口氏の発言がそれを象徴している。企業の基幹業務ソフトウェアという観点から見ると、「ERPのSAP」「CRMのSalesforce」「データベースのOracle」「オフィスソフトウェアのMicrosoft」と分野ごとにトップベンダーの社名が挙げられる中で、「SCMのパナソニック コネクト」と呼ばれるようになることを狙っているのだろう。基幹業務ソフトウェアにおいて、日本企業の製品やサービスがグローバル規模の「代名詞」になったことはかつてないだけに注目だ。

 最後に、樋口氏が冒頭の発言に続けて話したことを紹介しておきたい。

 「生成AIが昨今、注目されているが、これとモノが動く実行レイヤー、例えばロボティクスが組み合わさると高度に自律的なシステムができる。すなわちロボット自身が考えて動く。当社はロボティクスをはじめ実行レイヤーで長年にわたってビジネスを展開してきたので、そことBlue Yonderのソリューションがつながると、よりオートノマスなサプライチェーンが実現できるようになる。さらに今回、企業内に閉じたソリューションから企業間をつなぐような最適化を図り、その下に実行レイヤーとして当社が得意なインダストリーエンジニアリングやロボティクスへと連携が広がる可能性をひしひしと感じている。こうした夢に向かってチャレンジしたい」

 サプライチェーンは基幹業務であり、グローバルでは地政学、国内では物流の2024年問題や災害対策などに深く関係する非常に重要な分野だ。冒頭で紹介した樋口氏の発言で「これから一段と有望な市場になっていく」とあったのも、こうした意味合いが込められているのだろう。そこに同社および樋口氏の大いなる野望を感じる。

 なお、先ほど基幹業務ソフトウェアの観点で「SCMのパナソニック コネクト」になれるかどうかと述べたが、「実行レイヤー」まで含めた形で「サプライチェーンのパナソニック コネクト」とグローバルで呼ばれるようになるかどうか、同社の今後の動きに注目したい。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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