「55歳以上の約半数は、生成AIを使っていない」 世代間ギャップに潜むリスクとは【調査】CIO Dive

ある調査によると、生成AIの利用には「世代間ギャップ」が存在している。一部の従業員にしか利用されていない状況に潜むリスクとは。また、企業のAIスキルアップ計画が抱える課題は何か。

» 2024年10月16日 08時00分 公開
[Roberto TorresCIO Dive]
CIO Dive

 生成AIを導入する企業が増えるにつれて、一部の従業員にしか生成AIが使われていないという問題がクローズアップされるようになった。

「世代間ギャップ」がもたらすリスク

 2024年8月21日(現地時間、以下同)に発表されたDiceの報告書によると(注1)、一部の従業員しか生成AIを利用していない状況は、技術職も例外ではない。55歳以上の技術者の約半数が「生成AIを仕事で全く使っていない」と答えたという。

 一部の従業員にしか生成AIが利用されていない状況は、企業に決して無視することはできないリスクをもたらすという。それは何か。

 リスクとは、「世代間ギャップ」が生成AI導入に向けた企業の計画を混乱させる恐れを指す。

 IT技術者向けに転職サービスを提供するDiceは、「2024年第2四半期における技術専門家の意識調査レポート」のために、米国の技術専門家520人を対象にした調査を2024年6月に実施した。

 同レポートによると、18〜34歳の技術職の5人に2人は「少なくとも週1回は仕事で生成AIを使っている」と答える一方で、55歳以上の技術職の約半数は「生成AIを全く使っていない」と答えた。

 生成AIは、登場初期に期待されたような変革を未だにもたらしていないようだ。回答者の半数以上は「AIが自身の仕事に与える影響はわずかだ」という回答を選択した。

 技術の活用方法における世代間ギャップは、導入の取り組みを阻害する可能性がある。特に生成AIは、業務プロセスや従業員が果たす役割全体を変革する可能性があるため、阻害によるリスクは一層高まる。

 若い技術者は「ChatGPT」などの生成AIツールを迅速に活用し始めている(注3)。シンクタンクであるPewのデータによると、30歳未満の従業員は年上の同僚よりも仕事で生成AIツールを使う傾向が高い。

 「生成AIが自身のキャリアに与える影響」についての見解は、同じ技術者でも年齢層によって異なっている。ソフトウェアベンダーのJumpCloudが2024年2月に発表した報告書によると(注4)、34歳以下のIT管理者は、45歳以上の従業員よりも自身の将来に懸念を抱いているという。

 導入が進む中、企業による生成AIの活用は、人材の獲得戦略や維持戦略にも影響を与えている。Diceの調査によると、HR専門家の5人に4人以上は、「今後6カ月の間にAI専門家の需要が高まる」と予想している。

 一部の企業にとって、AI人材のニーズを満たすためには、既存の従業員のスキルアップが重要だ。AIサービスを提供する企業は、即戦力となる、資格を持つ技術者を増やすために、トレーニングカリキュラムや無料プログラムの提供を開始している(注5)。

 PwCを含む専門サービス企業は、従業員のトレーニングを含めて、大規模なAI導入のためのロードマップを展開している(注6)。

 コンサルティングサービスを提供するPwCのダン・プリースト氏(米国におけるチーフAIオフィサー)は、2024年8月に開催された「CIO Dive」のバーチャルイベントで次のように述べた。

 「最初に認識したことの一つは、人材が適切でない場合、大規模な投資が期待外れに終わる可能性があるということだ」

 ただし、課題があるのは人材だけではない。企業のスキルアップ計画も課題を抱えている。オンライン学習プラットフォームを提供するPluralSightによると(注7)、ほとんどの企業は既存の従業員のAIスキルのレベルを明確に把握していない。その結果、効果的なスキルアップ戦略を立てることが困難になっているという。

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