企業におけるAIの重要性がますます高まっている。専門性の高い領域における意思決定にもAIが活用され始めた今、労働市場でニーズの高い人材にも変化が訪れている。
SAPの子会社で運転資金管理ソフトウェアを提供するTauliaが発表した調査レポートによると、さまざまな業務でAIを活用する必要性が高まる中、ある領域では特に新たなAI人材の採用に追われている。
Tauliaは調査レポートの中で、調査対象である財務リーダーの45%が「AIの専門知識を持つ人材を新たにチームに迎え入れたい」と考えており、AI関連の専門人材を巡る競争の熾烈(しれつ)さが明らかになった。
「AIへの関心は社内外問わず高まっている。CFO(最高財務責任者)はAIに関する目標を達成するために必要な人材を確保するのが難しいと感じており、この問題はさらに悪化するだろう。そのため、AIスキルを特定して獲得し、育成するための包括的な機能戦略を定めることが重要だ」(Taulia)
ITコンサルティングを手掛けるCognizant Technology Solutionsの分析によると、生成AIの急速な台頭は2032年までに米国経済に年間約1兆ドルの成長をもたらす可能性がある。一方で、現在雇用されているビジネスパーソンの最大90%に影響を与える可能性があるという。
グローバル市場で採用サービスを提供するMultiplier Technologiesが2024年10月に発表した調査レポートによると、フリーで働くエンジニア向け求人情報サイト「Arc. Dev」では、2022〜2024年の間に生成AIに特化した職種への求人が13倍になった。より広範な分野におけるAIスキルの需要も急増しており、2022年の9%から2024年には21%と2.3倍に増加した。
Tauliaの調査レポートによると、世界の財務リーダーの57%が、AIが生成した分析結果を重要な意思決定に活用している。その結果、AIが生成した分析結果の役割の重要性は財務部門においてさらに増すと財務リーダーは予想している。財務リーダーの85%が「今後12カ月以内に意思決定に対するAIの影響力が高まる」と回答した。
2024年8月に実施された600人の財務責任者を対象とした調査によると、財務責任者はAI導入のハードルとして、「AI人材の獲得と維持が困難であること」や「従業員のAIスキル開発が遅々として進まないこと」を挙げている。
「財務におけるAIの役割が拡大し続けるにつれ、この分野の優秀な人材の需要はますます高まるだろう」(Taulia)
(注1)The Rise of AI in the Finance Function(Taulia)
(注2)New work,new world(Cognizant)
(注3)The tech talent evolution(Multiplier)
(初出)CFOs scramble for new AI talent amid fierce competition, report says
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