あるレポートによると、ほとんどの企業はAIプロジェクトから得られるリターンを50%以下と見積もっている。同調査では投資額を100%回収できた企業の割合が判明した。
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ITサービス大手のCDWが2025年4月の初めに発表したレポートによると(注1)(現地時間、以下同)、AIの大規模導入に向けた意欲的なプロジェクトが計画されている一方で、IT部門のリーダーや意思決定者は投資に対する十分なリターンを見いだせていない。
CDWが実施した調査では、900人以上のリーダーのうち約3分の2が、AI投資に関するROI(投資利益率)を50%以下と見積もっていた。
同調査では、投資額の100%を回収できた企業の割合も判明した。
投資額の100%を回収できる水準に達したケースは極めて少なく、回答者のうちそれを達成したのはわずか2%未満だった。
ROIに加えて、スケーラビリティも企業にとって課題となっている。最も優先度の高いAIプロジェクトについて「本格導入に至った」と答えたビジネスリーダーは、全体のわずか3分の1強にとどまった。
経済的な懸念が続く中で(注2)、CIO(最高情報責任者)はAIがコスト削減や収益拡大にどのように貢献できるかを注視している。しかし、AIの導入メリットを実感できるまでの過程で、企業は依然として不適切なデータ構造や人材不足の懸念、コスト面の課題に苦しんでいる。
また、AI製品が増え続ける市場を評価する中で、経営陣はAI製品を自社で開発すべきか、それとも既存製品を購入すべきかの判断にも苦労している(注3)。
CDWのデジタルエクスペリエンス部門に所属するケン・ドレイジン氏(ディレクター)は、レポートで次のように述べた。「われわれが会話した企業の9割は、AI導入をどこから始めるべきか、どのソリューションを活用すべきか、どのようにガバナンスを効かせてライフサイクル管理のアプローチを取るべきかに悩んでいる」
しかし、こうした課題があるにもかかわらず、経営陣は長期的な成果について楽観的な見方を崩していない。2024年12月に発表されたIBMの委託報告書によると(注4)、AIプロジェクトで十分なROIを達成できていない企業の多くが、「今後3年間でコストが削減できる」と見込んでいる。また約半数の企業が、「早ければ2027年までにコスト削減を実現できる」と予想している。
AI導入を推進するCIOは、業務の一部を自動化して従業員の生産性を高めることで成果を上げようとしている。既に「具体的な成果が出ている」と報告した企業もある。
食品メーカーのGeneral Millsは2025年初頭に開催した投資家向けのカンファレンスで、AIを活用したサプライチェーン最適化ツールによって「2000万ドル以上のコスト削減を実現した」と発表した(注5)。証券会社のCharles Schwabも、過去10年間で顧客当たりの口座管理コストを25%以上削減できたのは「AIの活用によるものだ」としている(注6)。
なお、CDWが実施した調査において、調査対象となったほぼ全ての組織が少なくとも1件のAIプロジェクトに取り組んでいた。
(注1)The Pace of AI Evolution Demands a Sense of Urgency(CDW)
(注2)How Trump’s tariff regime is cutting into IT budgets(CIO Dive)
(注3)Build vs. buy: Where vertical software vendors fit(CIO Dive)
(注4)ROI remains elusive for enterprise AI plans despite progress(CIO Dive)
(注5)General Mills attributes millions in cost savings to AI(CIO Dive)
(注6)Charles Schwab credits increased AI use with cost savings(CIO Dive)
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