Windows 10サポート終了を前に、企業のIT投資が活発化している。帝国データバンクの調査から、単純なハード更新にとどまらない、攻めの投資へのシフトが明らかになった。
帝国データバンクは2025年9月12日、企業におけるIT投資の実態をまとめた調査結果を公表した。有効回答は1035社とされ、2025年9月5〜10日に実施された。
結果によると、2025年内もしくは2026年にIT投資を実施する企業は88.8%に上り、全体の約9割に達した。大企業では98.5%とほぼ全ての企業が投資を予定しているのに対し、中小企業は87.4%、小規模企業では83.0%にとどまっており、規模間の差が明確に表れた。投資を予定しない企業は11.2%であった。
投資の具体的な目的については、PCの買い替えなどの「ハードウェアの更新」が69.3%で多く、続いて「ソフトウェアの更新」が52.6%を占めた。RPAやオンライン会議システムを含む「業務効率化・省人化」(29.5%)、サイバー攻撃への備えを意識した「サイバーセキュリティ対策の強化」(28.3%)、「社内ITインフラの見直し」(18.7%)といった項目が上位に入った。企業からは「社内PCの入れ替えおよびセキュリティ対策プログラムの更新」(機械・器具卸売)や「『Windows 11』への移行のためにPCを購入した」(情報サービス)といった具体的な声が寄せられている。
自社にとって役立っているシステムとしては、「会計ソフト」が39.8%と突出しており、財務管理における基盤として定着している。次いで「顧客管理システム」(CRM)(9.9%)、「生産管理システム」(8.8%)、「オンライン会議システム」(6.8%)、「セキュリティソフト」(4.4%)が続いた。業界別では、建設業で「施工管理システム」(10.7%)、製造業で「生産管理システム」(24.1%)、小売業で「CRM」(22.1%)の活用が目立ち、業種に応じたシステム利用の傾向が明らかとなった。
今後の導入意向については、「人事管理システム」(HRM)が9.3%で高く、企業からは「人事管理システムによって人材の適正配置に役立てたい」(再生資源卸売)との声が挙がった。続いて「CRM」(9.1%)、「生産管理システム」(8.4%)が上位を占めた。
「その他システム」(5.1%)については「AI関連システム」(金融)や「各システムを統合する基幹システム構築」(精密機械、医療機械・器具製造)、「販売・在庫・生産に加えて複数拠点を管理しやすい物流管理システム」(その他のじゅう器卸売)などを挙げる企業もみられ、AI活用やシステム統合を視野に入れた取り組みが進んでいることがうかがえる。ただし、「既にある程度のIT環境は整っているため、システムの新規導入は今のところ必要がない」(飲食料品・飼料製造)や「導入したいシステムは多々あるが、現状対応可能な人材および環境がそろっていない」(建設)との理由から新規導入を検討していない企業「特になし」も24.3%存在し、人材や体制の不足を課題とする声も寄せられた。
今回の調査から、「Windows 10」のサポート終了を契機にIT環境を見直す企業が多数を占めていることが明らかとなった。従来は更新を中心とした投資が主流であったが、現在は業務効率化やセキュリティ強化、AIや人事管理システムを含む戦略的な分野への投資が拡大している。大企業を中心に投資意欲が高まる中、小規模企業では慎重な姿勢も見られるものの、全体としては企業の成長基盤を支えるIT投資が今後進展する流れが示された。
NVIDIAが推進する「フィジカルAI」の動向 AIによる空間認識で製造業を支援
トレンドは生成AIから「ソブリンAI」へ Gartner、行政サービスのハイプ・サイクル2025を発表
富士通、1ビット量子化と特化型AI蒸留でLLMを軽量化 メモリ消費量削減しつつ精度は維持
ハルシネーションはなぜ起きるのか OpenAIの研究が示す「正答率信仰の罠」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.