大企業の人事部門の予算は拡大傾向にあるものの、全社売上高比0.31%にとどまり、IT投資に追い付いていない。一方、外部リソースの活用とデジタル技術で課題克服を図る実態も明らかになった。
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大企業の人事部門は、人員不足と予算の制約という課題に直面している。パーソルワークスイッチコンサルティングの調査によって、4割以上の企業で人事予算は拡大しているにもかかわらず、ITシステムへの投資拡大には追い付いていない実態が明らかになった。
全社売上高に占める人事予算は平均わずか0.31%という厳しい財政状況の中、大企業の人事部門はどのように組織運営を支えているのだろうか。
パーソルワークスイッチコンサルティングは2025年9月29日、従業員数1000人以上の大企業を対象とした「第2回 人事DXの推進状況に関する実態調査」の結果を発表した。同調査は人事部門の体制や予算規模、業務の外部委託、IT・デジタルの活用、従業員への取り組みなどをテーマに実施され、195件の有効回答を基に分析された。
調査によると、人事部門における人員不足の認識が広がっており、採用や特に人事企画の機能で「不足している」とする回答が2割を超えた。全社従業員に占める人事部門の人員比率は平均0.98%、中央値0.78%であり、海外人事を除く多くの機能で人材不足が指摘されている。
予算面において、全社売上高に占める人事部門の予算比率は平均0.31%、中央値0.14%にとどまっている。3割以上の企業がITシステム費の不足を回答しており、人件費についても「足りていない」とする回答が増加した。2024年度と比較して、4割以上の企業が人事部門の予算を拡大させたが、それでも投資の拡大に追い付かない状況が示されている。
人事業務の外部委託に関しては、全体的に増加傾向がみられた。特に「育成・研修」のアウトソーシング実施率が前回調査から約2割上昇し、売上上位50%の企業では半数が外部委託を実施していた。「社会保険」「給与計算」に関しては約1割の企業が完全に外部委託をしているが、「採用」については委託割合が減少している。
IT・デジタル活用の面において、人事評価・タレントマネジメントシステムの導入率が前回調査から約2割上昇し、導入済み企業は半数に達した。導入を検討中の企業も2割程度存在し、今後利用が広がる見込みがある。生成AIの活用も進展しており、3割以上が既に導入済みで、検討中を含めると5割を超えた。導入済み企業は前回調査から約15%増加した。
従業員への取り組みについては、「人事手続き支援」「育成・研修」「人事評価・フィードバック支援」に関して7割以上の企業が取り組んでいた。「採用・異動などのナッジ」の活用については2割以下にとどまり、取り組みの進展に差がみられた。Well-being向上に向けた活動を実施する企業は約5割で、特に上場企業では未上場企業よりも取り組み割合が約3割高い結果となった。
DXへの取り組み状況については、5割を超える企業が積極的に対応していることが示された。システム導入やアウトソーシングの導入時にビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)を実施する企業は約3割であった。
今回の調査結果から、大企業の人事部門では人員不足や予算の制約を抱えつつも、デジタル技術や外部資源を取り入れる動きが広がっていることが明らかとなった。特に生成AIやタレントマネジメントシステムの導入が進んでおり、今後の業務効率化や組織運営に与える影響が注目される。
パーソルワークスイッチコンサルティングは、調査結果を踏まえ、人事部門が事業成長の基盤を支える組織となるための支援を継続するとしている。AI技術や新たなソリューションを活用した生産性向上施策、人事中計や事業計画の実行支援を通じて、経営課題に応じた寄り添い型のサポートをする方針を示している。
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