東京都港区は、行政への電話問い合わせにAIが応答し、必要に応じて職員に引き継ぐシステムの実証実験を開始した。住民手続案内の迅速化と業務負担軽減を図り、将来の本格導入を見据える。
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行政手続きの効率化を支援するグラファーは2026年1月6日、東京都港区(以下、港区)が区民課業務を対象として、AIを活用した電話応答の実証実験を開始したと発表した。区役所に寄せられる多様な電話問い合わせに対応するため、AIエージェントの会話機能を活用し、区民サービスの質を高めることを目的とする。電話応対は行政サービスの入り口として重要性が高く、迅速かつ的確な案内体制の構築が求められてきた。今回の実験は、行政窓口業務におけるAI活用の可能性を検証する試みとなる。
実証実験は2026年1月13日〜2月28日まで、港区芝地区総合支所の区民課を対象に実施される。住民票や戸籍、マイナンバーカード、児童手当など、日常的に問い合わせが集中しやすい分野を中心にAIが応答する。区民は専用のフリーダイヤルを利用し、費用負担なく問い合わせられる。
本実験で使われるのは、グラファーが提供する「Graffer AI オペレーター」だ。AIが発話内容を認識し、事前に整備されたデータを基に案内する。回答が難しいと判断した場合は要件を整理して職員に引き継ぎ、区民が必要な情報にたどり着けない事態を防ぐ。単純な案内はAIが担い、職員は判断を要する業務に集中できる環境を目指す。
今回の取り組みは、港区が推進する新技術活用施策の一環として位置付けられている。自治体業務は人口構成の変化や制度の複雑化に伴い、問い合わせ内容が多様化している。電話応対の効率化は、窓口全体の運営改善に直結する要素であり、AIの活用は現実的な選択肢となりつつある。実証実験において、AIの応答精度や接続判断の妥当性を検証し、制度運用への適合性を見極める。
今後は、実験で得られたデータを基に、区民が安心して利用できる案内体制と、職員が専門性を発揮できる業務環境の両立を検討する方針だ。電話応対に限らず、行政サービス全体の利用体験を改善する観点から、AI活用の範囲拡張も視野に入る。段階的な検証を通じ、実運用へ移行できる水準を確認する考えだ。
グラファーは、企業や行政機関の業務変革を支援するスタートアップとして、生成AIを活用した各種サービスを展開している。行政分野では全国の多数自治体でデジタル基盤が採用されており、今回の実証実験もその知見を生かした取り組みだ。電話応対という身近な接点から行政DXを推進することで、住民と行政双方にとって持続可能なサービスモデルの確立を目指している。
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