不況下でも強いデータセンタービジネスの今:アナリストの視点(3/3 ページ)
企業のIT投資意欲は不況の影響で減少している。だが、情報システムの運営コストや管理負担を減らせるとして、データセンターを積極的に活用する動きは今後も継続する。不況下でも強いデータセンタービジネスの現在を分析する。
グリーンデータセンターと仮想化ホスティングがカギ
データセンターサービスの需要の拡大とともに増加するのが電力消費量だ。企業は規制強化やCSR(企業の社会的責任)などの角度からグリーンITへの取り組みを加速させている。
規制強化で最もインパクトが強いものは、「東京都環境確保条例」の見直しだ。大規模の事業所への温室効果ガス排出総量削減義務や排出量取引制度の導入などが柱となる。
2008年12月には、同条例への対抗策として産学官が協力のもと「日本データセンター協会」が設立された。だが、業界での足並みは揃っているとは言い難く、効果的な対応策を見いだせていないのが現状だ。
グリーンITの推進により、電力量の削減と関連サービスの単価の低減につなげることが理想だ。だが、現状ではグリーンITの実現には、IT機器や空調などの設備への多額な投資や定期的な監視が必要となる。実態としては、グリーンITの推進がユーザー企業の負担増につながっている。
データセンター事業者がグリーンITをさまざまな観点からとらえている一方、消費電力量が多い企業は、CSRとしての取り組みが目立つ。だが設備投資に費やしたコストをユーザー企業から回収するのは難しく、CSRの観点だけでは事業が成り立たない。データセンターのグリーンIT化を継続して実施する上でも、グリーンITを付加サービスとしてとらえ、事業化につなげていくことが重要だ。
データセンター事業者の多くは仮想化技術を使ったホスティングサービスの延長上のサービスを、クラウドコンピューティングと位置付けている。仮想化ホスティングサービスからクラウドコンピューティングに至るまでのいくつかのロードマップは想定できるが、ユーザーの立場に立ったサービス開発が重要になる。
仮想化ホスティングサービスには多くのベンダーが新たなサービスを追加しているが、アプリケーションまでを含めたサービスを展開しているベンダーはいない。今後上位レイヤーにサービスの範囲を拡大し、クラウドコンピューティングを実現していくものと推測される。
同記事は富士キメラ総研の『データセンタビジネス市場調査総覧 2009年版』をまとめたもの。同調査ではデータセンタービジネスの市場を、(1)ホスティング、(2)ハウジング、(3)共同利用型サービスに大別。さらにそれぞれを基本サービス型、アウトソーシングサービス型に区分し、市場全体の推移とデータセンター事業者の設備投資動向を分析している。
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