履歴データ以外の部分について、データをそろえる要件が整いました。次に実際の履歴データを取り込む要件を検討します。
まず、どのデータを利用するか、判断する必要があります。業種や業態、商品によってどのデータが有益か、実際にデータを取得できるかなど、見極めなければなりません。
一般的には、自社の販売部門にある「販売実績データ」、製造部門にある「生産・出荷データ」などが考えられるでしょう。
需要予測を行うときの原則は、
の2点です。小売商品であれば、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどのPOSデータが一番消費者に近いデータですが、提携でもしない限り製造業の会社がそれを入手するのは難しいでしょう。一部は調査会社などから入手することは可能ですが、参考程度にしか利用できないでしょう。
このうち、“正確な”データの定義ですが、例えば、返品や廃棄された製品を反映して、できるだけ実態に近いデータ──といったところでしょう。データの正確性に関しては、必要な精度とそれを算出するための手間とコストを勘案して、どの程度行うのかを決めていかなければなりません。
いま需要予測を行おうと考えている企業は、週次で行うことを検討されていることが多いようです。この前提で考えると、実行(基幹)系から毎週土曜日の夜に実績データを需要予測システムに転送し、処理を行うことがよいでしょう。
履歴データを入力すると需要予測システムでは、予測結果をはじき出します。この予測を基に、さらに人間系で修正をかけていきます。先に記載した「需要予測モデルの調査」を踏まえて各項目のパラメータや新規イベントを修正・追加する作業です。
週次サイクルで進行するのであれば、システムでの需要予測と修正を週の前半で実施し、後半はその結果を基に営業部門、生産部門とミーティングを行い、フィードバックを行います。
人間系で行う修正は以下のものがあります。
1.モデルのパラメータの修正
これは、ある製品が当初予定した状況よりも実績が高ければ、その製品の販売予定平均値を上げて、予測の当たる確度を上げることなどを指します。
2.将来のイベント情報
「需要予測のモデル調整」の項にも記しましたが、販促活動などがあれば、販売実績は増えることが考えられます。そのような情報を需要予測データに追加していきます。
予測と実績の管理を行い、予測精度の分析します。どのような分析方法を利用するかも決めていきます。
計画に使用する予測期間は、予測開始日から数えて、資材発注や生産調整に必要なリードタイムを考慮した範囲をカバーする需要計画を15週分作成する──といった形で決めていきます。
・タイムバケット
1.サイクルの決定
前述しましたが、実際の運用をどのように回すかを決めます。週次・隔週次・月次などが主立った考え方です。週次の場合、曜日のサイクルが日曜〜土曜日なのか、月曜〜日曜日なのかなどの検討も必要になります。
2.1年間のサイクルの決定
基本となる需要予測のサイクルが決定しても、これとは別に年間の区切りが必要です。1月1日〜12月31日か、4月1日〜3月31日のサイクルが多いようです。もちろん、これも各社の考え方に従って決定します。
・カレンダーの例外処理
例えば、「1月1日〜1月7日の間の日曜日を1年の開始日(第1週)とし、1年間を52週と設定する」という要件を定めたとします。そうすると、6〜7年に1度、53週目が発生します。前提を52週とするのであれば、どの週を別のどの週に繰り入れ、14日間という例外的な週を設定するのか、といったことを決めておく必要があります。
・終売品の対応
生産・販売している製品には必ずライフサイクルがあり終売の時期を迎えます。そのときにはどのようなプロセスで実施するかの要件をあらかじめ決定しておきます。
1.終売品の定義を決定する
2.“終売”の決定を行う権限者(部門)を決めておく
3.終売品の終売決定日以降の需要予測(継続予測)を行うか否かを決める
今回あえて割愛したことがあります。それは一般的には“需要予測単位”と呼ばれるものです。DFU(Demand Forecast Unit)とも略されます。この件に関しては別の機会に触れたいと思います。
南野 洋一(みなみの よういち)
ITコンサルタント。前職で1993年から社内システムをノーツやオラクル、SAPを用いて構築を行う。当時はバブル経済が崩壊した時期で人員削減が行われる中、BPRを主眼においた仕組み構築に取り組んだ。その後、システムコンサル系の企業に移り、製造業中心にSCM導入に従事。社内改革業務に取り組んでいる。ときには人材不足気味な中堅企業の情報システム部門の雇われマネージャを務めている
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