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» 2002年12月03日 12時00分 公開

エンタープライズ・コラボレーションはいま 特集 PART 2:次代のコラボレーションを担う主要3製品の特徴と戦略

[大河原克行,@IT]

 前回は、グループウェアソフトが、コラボレーションソフトへと進化する過程を追ってみた。だが、コラボレーションソフトとひとくくりにされる各社のプロダクトは、その内容を見てみると、得意といえる領域が明らかに異なっており、単純に競合する製品ではないことが分かる。今回は、日本IBMのNotes/Domino、マイクロソフトのExchangeServer、サイボウズのサイボウズAGおよびガルーンといったコラボレーションフトの代表的な製品を取り上げ、各社の製品の特徴を踏まえながら、製品ターゲットの違いを浮き彫りにしてみたい。

 コラボレーションソフトとひとくちにいっても、製品ごとに市場ターゲットや使い方、そして得意分野が異なっている。

 今回取り上げる日本IBM、マイクロソフト、サイボウズといった3社のコラボレーションソフトベンダの幹部の間からも、「各社の製品は、部分的には競合するものの、完全にターゲットが重なるものではない」という言葉が異口同音に聞かれる。

 とはいうものの、1つの領域としてとらえられる製品だけに、ベンダ各社は、相互に意識をしないというわけにはいかない。日本IBMとマイクロソフトは、お互いに直接競合する製品ではないとしながら、それぞれに対抗製品からの乗り換えを促進するキャンペーンを実施している点からもそれは明らかだ。

 最も賢い方法は、製品の特性を理解して、自らの企業が求めるソリューションに近い製品を選択することである。それでは、代表的な3製品を見てみよう。

業務プロセスを支援するNotes/Domino 6

 この分野で最大シェアを誇る日本IBMのロータスディビジョンのNotes/Dominoは、今年10月、新製品として「Lotus Notes/Domino 6」を発表した。

テキスト、音声・画像、ファイル、オブジェクトなどのさまざまなデータを格納し、データを一元管理する点がLotus Dominoの特徴

 3年半ぶりのメジャーバージョンアップとなる今回の新製品は、IBMの傘下に入って、初めて投入される製品。そして、IBMが掲げるオートノミックコンピューティングの考え方を取り入れた初の製品とも位置付けられている。

 Lotus Notes/Domino 6が目指したのは、従来から得意とする業務利用における機能を強化するという点だ。

 「業務の流れをより速くするにはどうしたらいいか。例えば、営業のプロセスにおいて、ターゲットを作り、アクションプランを策定し、これを実行して、フォローするという一連の作業をいかに速く行うか。こうしたプロセスを支援することが可能なコラボレーションソフトがNotes/Domino 6だ」と話すのは、日本IBMソフトウェア事業部ロータス事業推進・神戸利文部長。続けて、「さらに、これを部門ごと、全社ごと、そして企業間という利用まで想定したうえで、それぞれの用途に応じた拡張性を持たせている点も大きな特徴」だと話す。

 既存の大手Notes/Dominoユーザーの関心は、企業間連携に移りつつある。その点では、安全性とスケーラビリティは重要な課題。さらに、利用範囲の拡大とともに、煩雑化する管理についても改善が求められている。

 今回のNotes/Domino 6では、Dominoサーバにおいて、サーバ管理機能の強化とともにメモリ管理機能、タスク管理機能などのアーキテクチャの変更、オートノミックコンピューティングで実現される自己修復機能の搭載やディレクトリ管理機能の強化といった信頼性、管理性の向上に力を注いでいるのに加えて、クライアント/サーバ間の動作の高速化、基幹系システムとのリアルタイム・アクティビティなどの機能強化も図っている。

ウェルカム・ページなどが機能強化され、企業ポータルを可能とする「Lotus Notes 6」

 一方、Notesクライアントに関しては、個人ポータルを容易に設定できるようにするとともに、管理機能を強化、さらに業務の目的別にシステム管理者がポータルを設定して、これを共有ポータルとして活用できるようにしている。「企業ポータルの実現によって、全社的なナレッジの共有を実現、業務遂行のための基盤ツールとして生産性向上の効果をもたらすことができる」(神戸部長)というわけだ。


 さらに、もう1点、同社が今回の新製品投入とともに力を注いだのが、懸念材料の1つとなっていたノーツ/ドミノ R4.6ユーザーの新バージョンへの移行だ。

 ノーツ R5の反省点を踏まえて、移行ツールおよび関連するサービスを製品発表と同時に発表、パートナー各社に対してもNotes/Domino 6への移行を積極化させるための施策を用意した。

 J2EEのサポートに加えて、既存の対応アプリケーションをNotes/Domino 6に移行させるために、12月11日に東京・渋谷にオープン予定のソフトウェアの検証/デモセンターである「IBM SW CoC」(Center of Competency)をパートナー各社に開放。ユーザーが新製品へ移行しやすい環境の整備を後方支援する。また、今回の製品で、すでにマイクロソフトがサポートを終了しているWindows 95に対しても、一部機能が限定されるものの、サポートを表明したのも、Windows 95ベースで利用しているノーツ/ドミノ R4.6ユーザーが多いことを想定した対策だといえるだろう。

総合運用の中で、XML利用などを訴えるマイクロソフト

 これに対してマイクロソフトは、単一の製品で統合的なコラボレーション環境を作るソリューションはもっていない。逆にWindows環境下でExchange Serverに、データベースであるSQL Serverなど、さまざまなソリューションを組み合わせて、全社規模のコラボレーション環境を構築できることを訴える。

マイクロソフトが提唱する「ナレッジソリューションズ」を構成する製品群

 このソリューションの中で、Exchange Serverには、大きく3つのポイントがある。

 1つは、同社が掲げる「メッセージ&コラボレーション」を実現するソフトである点だ。つまり、これはコラボレーションソフトの本来の目的ともいえる、全社的な情報システムインフラとして活用することを意味する。

 2つ目は、インスタントメッセージ機能を早期から取り入れるなど、ユニファイドメッセージあるいはリアルタイムコミュニケーションを実現するツールであるという点だ。日本では、まだインスタントメッセージ機能が本格的に使われているわけではないが、今後同社では、この機能の優位性や活用方法などを訴えていく考えだ。

 そして3点目には、Active Directoryとの統合である。システム管理者にとって、ディレクトリ管理の容易性は 全社システムとしての運用には欠かせない要件。さらに、ユーザービリティの向上といった面や、ほかのアプリケーションとの統合運用の際にも威力を発揮する。

 マイクロソフトでは、こうした点を訴えることで、新規ユーザー獲得とともに、既存のNotes/Dominoユーザーからの移行を図る考えだ。

 マイクロソフトの製品マーケティング本部エンタープライズサーバー製品部コラボレーションサーバーグループ・中川哲マネージャは、「Web化の流れ、システム連携という流れを考えれば、現在、ノーツをデータベースアプリケーションとして活用しているユーザーは、少なくとも将来の発展に対して不安を覚えたり、一部では限界を感じ始めているのではないだろうか。こうしたユーザーにとってこそ、Exchange Serverは最適だろう。今後は、XMLによるシステム連携を訴えることができるExchange Serverの優位性を訴えたい」と話す。

 また、こうした企業ユーザーの「危機感に対する応急処置」(中川マネージャ)として同社が掲げているのが、SharePoint Portal Serverの活用である。

 「ノーツから完全移行する気はないが、将来に不安を感じているというユーザーに対して、将来的に、.NETやSQL Serverを利用できるという安心感を提供できるSharePoint Portal Serverを提供することによって、次世代の企業内ポータル利用や、コラボレーション活用の不安を払拭することができる」という。

 大手企業のコラボレーションソフトの導入は、すでに飽和状態にあるのが現状。だが、マイクロソフトが指摘するように、ノーツユーザーに限らず、次世代のポータル活用あるいは、業務活用という点での不安感を持っている企業があるのも事実だろう。こうしたユーザー層に対して、マイクロソフトは徹底的な仕掛けを行おうとしているようだ。

手軽なグループワーク支援ツールとして、無料提供される「GroupBoard 2.0」。SQL ServerやExchange Serverなどとの連携で機能拡張を図れる

 一方、「ワークグループレベルで導入してみたいというユーザーに使ってもらうための製品」として投入したのがGroupBoard2.0だ。

 日本市場向けの専用製品と位置づけられる同製品は、スケジューラ、掲示板といった、グループウェアとしての最も基本的な機能を搭載したもので、いわばサイボウズ対抗ともいえる製品だ。

 従来のGroupBoad1.xは、Exchange 2000 ServerおよびSmall Business Server 2000を基本プラットフォームとしていたためユーザーが限られたが、同2.0からはWindows 2000 Serverをプラットフォームとして利用できるようにしたことで、対象となるユーザーの絶対数を増加させ、さらに同社Webサイトから無償でダウンロードすることができるという戦略的な手法によって、先行するサイボウズを追撃する構えだ。

 Notes/Dominoからの乗り換え戦略とともに、日本独自の展開として、サイボウズ対抗を鮮明に打ち出した取り組みを行うなど、この分野におけるマイクロソフトの積極的な姿勢が伺える。

基幹システムとの連携を前提とするサイボウズ ガルーン

 スケジューラと掲示板という最も基本的な利用シーンからグループウェア市場に参入したサイボウズは、大手企業の部門が容易に導入できる仕組みと、簡易な操作性環境を実現するという優位性によってシェアを高めてきた。

 だが、部門ごとに導入されたサイボウズを相互に連携したいという動きや、全社規模あるいは企業間で活用したいという動きが出てきたことで、サイボウズAGおよびサイボウズ Officeでは限界が生じてきたのである。

サイボウズ ガルーンの画面。その人に必要な情報だけを表示する“エージェント指向”インターフェイスをサイボウズAGから引き継いだ

 新たに投入したサイボウズ ガルーンは、こうした需要に対応したものといえる。

 サイボウズの青野慶久COOは、「会社設立当初から、こうした製品の開発は想定していた」と前置きしながらも、「いかに、サイボウズAGやサイボウズ Officeの操作性の良さを失わずに、全社規模でのコラボレーションを実現できるかが開発の鍵だった」と話す。

 同社では、サイボウズ ガルーンにおいて、社内基幹システムとの連動を前提とした開発設計へと移行するとともに管理機能を強化、さらにクライアントにおいては、エージェント指向のトップページの実現と、個人単位にカスマイズが可能なレイアウトの提供といった柔軟性を持たせることで、必要な情報だけを表示できるような仕組みとした。

 管理コストの低減に向けては、集中管理サーバから一元的な管理を可能とし、レポート送付および重要レポートの配布を含めたサーバ監視、ワークグループごとに管理権限を委譲できる仕組みを実現するなどの新機能を追加した。

複数のガルーンサーバを一元管理する集中管理サーバを設置できるとともに、他システムの連携機能を強化したサイボウズ ガルーン

 また、Domino 6上での動作保証や、公式ライブラリの提供による各種業務システムとのデータ連携なども実現、Gパートナーと呼ばれるSIerの業務システムとの連動も順次図られることになる。

 そして、同社では、サイボウズ ガルーンの投入に合わせて、ビジネスモデルの変更という大きな挑戦に挑んでいる。

 これまでWebを通じた直販展開であったものをガルーンに関しては、一切直販を行わず、Gパートナーを通じた間接販売へと完全移行した。

 青野COOは、「全社規模のグループウェアを売り込む場合、エンタープライズに関する販売、技術ノウハウを持っていることが必要。当社がこれまで蓄積したノウハウでは、残念ながらそこまでのものがない。Gパートナーによる間接販売に特化したのも、こうしたエンタープライズ向けのノウハウを生かした展開が可能になるからだ。ガルーンは、9月24日の出荷以降、数多くの引き合いをいただいている。パートナー戦略によって、さらにユーザーを拡大したい」と話す。

 現在、Gパートナーとなっているのは、NEC、富士通、内田洋行、リコーテクノシステムズ、日本ビジネスコンピューター、大塚商会、エンサイクロソフトの7社。主要SIerが相次いで参加しているのが分かる。

 「これまで当社の直販では入っていけなかった情報システム部門に対して、アプローチが可能になる」と期待を寄せている。


 このように、各社のコラボレーションソフトは、少しずつ得意とする領域が異なる。また、それぞれの企業の生い立ちによっても、営業展開方法や製品開発アプローチに差があるといっていいだろう。

 だが、コラボレーションソフトに対するユーザーの要求は、基幹システムとの連携、全社規模での活用および企業間連携へと広がりつつあるのは間違いない。その中で、各社の製品が、市場要求に合わせた形で進化することができるかが鍵だろう。

 そうした意味でも、ベンダ各社は、将来にわたった明確な製品開発計画と方向性を明示する必要が、これまで以上に求められるのではないだろうか。

(了)

Profile

大河原克行(おおかわら かつゆき)

1965年東京都出身。IT業界専門紙「BCN(ビジネス・コンピュータ・ニュース)」で編集長を経て、現在フリー。IT業界全般に幅広い取材、執筆活動を展開中。著書に、「パソコンウォーズ最前線」(オーム社刊)など


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