素人IT部長に望むことシステム部門Q&A(18)(1/3 ページ)

これまで慣れ親しんだ職種を離れ、情報システム部長の辞令を受けた。コンピュータのこともよく分からない場合には、どのようにすればよいのか? 今回は素人IT部長に求められる姿勢を一般的なあるべき論ではなく、ブラックユーモアあふれる反面教師的な内容で紹介する。

» 2005年02月11日 12時00分 公開
[木暮 仁,@IT]

質問1

素人IT部長は何を留意すればよいのでしょうか?

このたび情報システム部長になりました。これまで営業畑一筋で、地方の支店長から転勤したのですが、かなり環境が異なり戸惑っています。素人の情報システム部長として、どのようなことに留意するべきでしょうか。


意見

情報活用が経営に密接に関係するようになり、情報システム部門も戦略部門としての任務が期待されています。それに伴い、情報システム部門はいかにあるべきか、その指導者/責任者としての情報システム部長あるいはCIOはいかにあるべきかが課題になっています。

 しかし、教科書的なあるべき論は、ちまたで多く語られていますので、ここでは、もっと人間的なことを話題にします。かなり偽悪的な内容になっていますが、ご容赦ください。



情報システム部門の社内的地位を上げること

 一部の企業を除けば、情報システム部門は他部門と比較して低い立場にあります。それは、経営的な観点からも不適切です。情報システム部長の任務として、情報システム部門の社内的地位を向上させることを考えましょう。

 (1)低い情報システム部門の社内的地位  

 そもそも、あなたはどうして情報システム部長になれたのでしょうか?いい換えれば、どうして経理部長や生産部長になれなかったのでしょうか? また逆に、どうして情報システム部門から支店長になった人がいないのでしょうか?

 情報システム部門は、製品を生産したり販売する部門ではないので、間接部門だといえます。他部門の業務改善を情報技術の分野で支援するサービス部門でもあります。また、全社的な情報化を統括する管理部門でもあります。この観点から、経営部門や人事部門と似た部門だといえます。

 情報技術という「特殊」能力を持つ専門集団ではないか、という意見があるかもしれませんが、会計や人事管理の知識と比較して、情報技術が特に専門的で特殊だとはいえません。その証拠に、財務諸表が読めない経理部長や、生産設備能力を知らない技術部長は想像すらできないのに、データベースもネットワークも知らない情報システム部長はいくらでもいます。

 それどころか、情報システム部長たちが集まった場所で「私は情報システム一筋に30年間やってきました。いまでもプログラムは若いやつらには負けません」とあいさつすると、軽く思われてしまい、誰も相手にしてくれません。「私は先月まで販売部門にいました。コンピュータのことはさっぱり……」といえば、高く評価されます。これはCIOでも同じでしょう。すなわち、情報システム部門自体が情報技術を評価していないのです。

 一般的な社員は、予算申請をカットされても、自分が期待していない部門に配属されても、経理や人事部にあからさまな文句をいえません。予算申請や人事評価で煩雑な書類を強いられても、黙々と記入しています。経理部や人事部も一方的に決めることを当然だとしています。ところが、情報システム部門が要求を満たさないシステムや、操作方法が面倒なシステムを作ると、利用部門は声高に文句をいいますし、情報システム部門はそのような文句が当然だとしてシステムを改善します。

 情報システム部門では、利用部門の業務を理解することを重視しているのに、利用部門に情報システム部門の業務を理解せよとはいいません。「情報特有の3文字略語を使うな」といって、部外者には世界共通用語を変な日常語にしています。ところが、営業部門や生産部門では、自社内でしか通用しない用語で情報システム部門に話します。そして「利用部門が理解できないのは、情報システム部門が悪い」し、「情報システム部門が理解できないのは、情報システム部門が悪い」ことになっています。

 情報システム部門は利用部門をお客さまだと思っています。「後工程はお客さま」といわれます。利用部門は情報システムの利用者であり後工程なのでお客さまだともいえますが、その前に、利用部門のニーズにより情報システム部門が開発するのだとすれば、少なくともニーズ確定の段階では、情報システム部門が後工程を担当するお客さまだともいえます。それなのに、この段階でも利用部門の方がエライのです。そもそも「お客さま」は自社の製品を買ってくれる消費者であり、情報システム部門も利用部門も戦友の間柄のはずです。

  (2)社内的地位を向上しよう  

 経営における情報技術活用が重視されてきています。それなのに、中心となる情報システム部門が無意味に社内的地位が低いのは不適切です。しかも、情報システム部門の地位が上がるのは、あなた自身の地位も上がるのですから、真剣に取り組んでください。

 どの上司も優秀な部下を持ちたいと望みますが、優秀な人材がわざわざ昇進の道も閉ざされている社内的地位の低い部門を希望するでしょうか? むしろ、現在の優秀な部員が他部門への転出を希望しているのではないでしょうか。優秀な人材を欠くと、期待される任務が果たせなくなり、さらに地位が低下するという悪循環になります。

 また、情報システム部門を戦略部門として、経営の中枢にしようという動きがあります。そのときは、他部門に対して指示をする立場になります。現在のような状況に慣れた部員が、一瞬にしてその立場をこなせるでしょうか? その準備のためにも、他部門との関係を健全にしておく必要があります。


 当然、古参部長も情報システム部門の地位向上を図ってきました。しかし、すでにコンピュータ屋とのレッテルを張られており、正当な意見を述べても、我田引水、自己都合のように受け取られがちでした。それに対して、新参部長は客観的な立場と見なされますので、説得力があります。

 しかし、他部門から来た部長が、情報システム部門の地位を低下させることがあります。新部門での雰囲気になじめないので、古巣の部門から足が洗えません。情報システムをめぐる対立でも、一方的に古巣部門の肩を持ち、「情報システム部門は利用部門の業務を理解せよ」的な発言になってしまいます。さらには、この部の頭の固い連中は相手にせず、利用部門とベンダでERPパッケージでシステム開発をしようとか、ダウンサイジングを敢行しようとします。そのとき、情報システム部員を下働きに使うのですね。これでは、情報システム部門の地位はますます低下し、部員の士気は下がります。

 ではどうするか? これに関しては多くの教書的意見がありますが、私は情報システム部門と利用部門間での計画的ローテーションと、情報システム部門を人材育成部門とすることが効果的だと主張しています(参照:「第3回 社内から必要とされるITスタッフを育成するには」)。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.