IT化のカギを握る上級シスアドとは?トレンド解説(10)(3/3 ページ)

» 2005年02月18日 12時00分 公開
[アットマーク・アイティ編集局,ITmedia]
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社内における上級シスアドの評価は?

 そこで気になるのが、社内における上級シスアドの評価だ。一般企業において、本業と異なる分野の資格はどの程度評価されているのか。

(左)東京海上日動システムズ 営推・損害ソリューション本部 損害ソリューションサービス部 ソリューションプロデューサー 山中吉明氏
(右)富山富士通 ソリューションビジネス統括部 GLOVIAソリューション部 プロジェクト課長
植松栄介氏

 荏原製作所の飯尾氏、大日本スクリーン製造の吉野氏は「社内にIT開発を理解できるスタッフがいることは、とても重要」として、それぞれの社内で正当な評価を受けているという。これはKDDIも鹿島建設も同様だ。例えば荏原製作所では、資格取得の手当として、月々の報酬に加算しているという。「IT化を大切に考えている企業だからこそ、ITのスキルを正当に評価しているのでしょう」(飯尾氏)。報酬に加え、会社がIT化の企画・立案の中心人物として尊重することで、モチベーションも維持できるわけだ。

 とはいえ、「本当に会社や社会から上級シスアドが認められ、そのスキルと知識に正当な評価が与えられているか」という点を突き詰めると、完全に“イエス”というわけではない。資格取得者も増えてきているとはいえ、上級シスアドという専門職が社会的に認知されているかというと、まだその段階までは到達していない。

 その理由として挙げられるのが、上級シスアドが「職種」ではなく「仕事内容」による部分が大きいからだ。実際、今回取材した上級シスアドの方々も、情報システム部門や経営企画室あり、一般企業あり、SI会社あり、と属する業種も職種もさまざまだ。合格者の内訳を見ても、いわゆる情報処理産業従事者の比率は決して多くない。例えば平成16年度試験の内訳を見ると、「電気・ガス・熱供給・水道業」の従事者が最も多く、次いで「金融・保険業、不動産業」となっている。そこを解決し、職種として上級シスアドを確立したいというのが、上級システムアドミニストレータ連絡会の思いだという。

上級シスアドという“職種”を作り上げる

 上級システムアドミニストレータ連絡会は、上級シスアドの交流を支援する任意団体だ。もともとはパソコン通信NIFTY-Serve(現ニフティ)の資格試験勉強会フォーラムから誕生し、2005年1月末現在で345名の正会員を抱えている。条件は上級システムアドミニストレータ試験に合格、あるいは受験予定者で、同会の趣旨に賛同することだ。

  大日本スクリーン製造の吉野氏は、「趣旨といっても大げさなものではありません。『全国の上級シスアドが抱える仕事の困難点や解決策、最新情報の収集などをはじめ、互いの親ぼくを深めるために積極的に交流していこう』というものです」と語る。

 発端がパソコン通信のフォーラムだったこともあり、会員の交流は「気の置けない仲間」という感じだそうだ。実際、交流会ではいま抱えている案件やプロジェクトも可能な限りオープンにし、つまずいている問題点や課題について知恵・ノウハウを交換し合うのだという。ここに、「上級システムアドミニストレータ連絡会の意義があります」(吉野氏)という。

 実際のプロジェクトで課題となるのは、IT化計画そのものより、部門間の調整や協力SIとのやり取りなど、人間系に属する事柄が多い。そうした課題をどう解決していったのか。成功事例は何か。このような課題について、メーリングリストや交流会を通じて情報交換をし合う。東京はもちろん、関西や中部などでも地域ごとに交流会や研修会を開催しているそうだ。また年に1回は会全体の合宿もある。こうした中で、情報交換にとどまらず、仕事内容について忌憚(きたん)ない思いを交換し合うこともあるという。

 上級システムアドミニストレータ試験が発足して10年目に当たる今年は、こうした内部の活動以外に外向けの活動に注力していく構えだという。「その1つとして、会員候補として初級シスアドの方にも門戸を広げたいと考えています。まず社内で、『10人に1人は初級シスアドの資格を持っている』という体制を形作り、その中から上級シスアドが生まれていく、という流れを作っていきたいですね。勉強に必要な支援や情報交換も積極的に行いたいと思います。『初級シスアド、上級シスアドはこういう職種』という地位を足固めし、そのキャリアプランを提示したいと考えています」(吉野氏)。


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