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» 2005年03月19日 12時00分 公開

なぜ、R/3のシステム開発と運用コストは高いのか?SAP R/3バージョンアップ方法論(1)(1/3 ページ)

1990年代より、大企業を中心とした多くの企業がSAP R/3を中心としたERPパッケージを導入した。しかし、現在では導入企業の多くが「ライセンス料を含む運用コスト」や「バージョンアップ」などを問題や不安点として抱えている。このような問題に対して、どのように取り組めばよいのか? この連載ではR/3のバージョンアップ論を中心に考えていく。

[斎藤 滋春,エス・アイ・サービス]

興味深い調査結果

 ERP研究推進フォーラムが、ERPソフトを導入している企業に対して行ったアンケート調査によると、導入企業がERPの運用で抱えている問題や不安点として、「ライセンスの年間保守料を含む運用費用」「バージョンアップ」「狙った効果と実績のギャップ」「システム間のインターフェイス」「ユーザー部門からのクレーム、改善要求」「運用要員の確保」という項目が上位を占めた。

 また、同アンケートではERP導入におけるアドオンの現状を調査しているのだが、「計画よりもやや多くなった」や「計画よりもはるかに多くなった」と回答している企業が全体の80%弱だった。さらに、それに付随した予算投資額と実績に関する調査では、「10%未満の超過」「10〜20%未満の超過」「20%以上の超過」と回答している企業が全体の50%以上という結果となった。

 この3つの質問への結果は密接に関連している。アドオンの増加の原因として考えられるのは、導入プロジェクトのパッケージに対する考え方やERPベンダの販売姿勢、導入作業を担当するシステムインテグレータの体質、システムインテグレータの技術者のスキルなどがある。

「ERPを導入するとBPRが実現できる」という誤解

 1990年代前半にバブル経済が崩壊し、企業を取り巻く環境は厳しくなっていくとともに、企業は自らを見直すことを余儀なくされた。1993年、米国で出版された「Reengineering the Corporation: A Manifesto for Business Revolution」によって広がったビジネスプロセス・リエンジニアリング(以下、BPR)というコンセプトは、そのような企業にとって危機から脱出するコンセプトとして導入されていった。その潮流の中で、BPRを支えるツールとして出てきたのが「SAP R/3」を中心としたERPパッケージである。

 さらに、海外企業の日本市場への参入や、日本企業の海外進出によるグローバルな競争環境への対応=グローバリゼーションの必要性、ビジネスプロセスの見直しによる意思決定の迅速化=リアルタイム経営の必要性なども、外国のソフトウェア中心であったERPパッケージを後押しした。「ベストプラクティス=世界の成功している企業のビジネスプロセスが、コーディングせずにパラメータの設定をするだけで実現できます」や「1FACT 1PLACEのコンセプトの下に統合データベースになっているので月間、週間の売り上げ実績もすぐに把握することができます」という営業トークを導入企業は聞いたことがあるだろう。

 しかし、ここで1つ矛盾が存在していた。いつの間にか「ERPパッケージを導入するとBPRが実現できる」というロジックになっていたことである。本来、ERPパッケージは、BPRのコンセプトの下にビジネスプロセスを見直して再構築した後に、適用の可否を判断し、適用可とされた場合に導入されるべきもので、ERPパッケージの導入はBPRによるビジネスプロセスの見直し、再構築が前提となるものである。しかし、BPRのコンセプト自体には具体的な方法論がなかったことから、BPRを導入したい企業(「BPRを導入したい」という言い回しもおかしいのだが……)は、「ERPパッケージを導入するとBPRができる」と信じて、ERPパッケージの導入に踏み切っていった。

矛盾を解決する方法が“アドオン頼り”となった

 この矛盾を置き去りにしたまま、ERPパッケージを導入しようとすると、何が起こるか? この問いに対する答えの1つがアドオンの増大である。ビジネスプロセスの見直しをしないでERPを導入するということは、情報システム側から見ると、既存のシステムをERPで置き換えるということになりがちである。そうすると、既存システムはエンドユーザーから見て業務が遂行しやすいように手作りされているものであるから、出来合いのパッケージとの差異が歴然としてくる。

 ERPパッケージが登場する以前の情報システムというのは、エンドユーザー主導で開発されたものであるのに対して、ERPパッケージの効用は経営層にあるものであり、エンドユーザー層にあるものではない。よって、ERPパッケージの導入には経営層のリーダーシップというのが重要になってくるのだが、そこをあいまいにしたままの導入プロジェクトが多かったため、エンドユーザーを満足させるためのERP導入、つまり「いままでと同じことができないと困るというクレームへの対応」になってしまい、アドオンが増えていくということになる。

 さらに、ERPパッケージは、財務会計、管理会計、販売管理、在庫・購買管理、生産管理など、企業のあらゆる基幹業務をカバーしていることから、ERPベンダやシステムインテグレータは、あらゆるビジネスプロセスまでカバーしているようないい方をし、1990年代後半のERPベンダは「ERPの競合はレガシーシステムです」ということをいいながら、企業の基幹システムすべてをリプレイスしようとしていた。ところが、いざERP導入を進めていくとカバーしていない機能があり、そのカバーしていない機能をアドオンとして開発するか、レガシーシステムやサブシステムを残さざるを得ず、ERPパッケージとそれらのレガシーシステムやサブシステムを連携するアドオンプログラムを開発することによってなんとか対応していった。

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