プロジェクトメンバーがそろう前に行っておく事前準備ユーザーサイド・プロジェクト推進ガイド(14)(2/2 ページ)

» 2006年08月31日 12時00分 公開
[山村秀樹@IT]
前のページへ 1|2       

思考とコミュニケーションのベースを整備する

用語辞書を作成する

 プロジェクト初期において、最も優先度の高い作業は、業務やシステムで使う用語を整理することであり、その成果物は項目の定義リスト(用語辞書)です。

 用語辞書については別の機会に取り上げる予定ですが、システムで使う用語を整理することは、無用な誤解やトラブルを防ぐものであり、内部統制の観点からも必要です。

 用語辞書はプロジェクトで使うべき用語を限定するものでもあるので、早い段階で速やかに作成しなければなりません。手本となる実際の資料を作るに当たって、実際に現場で使われている用語を洗い出し、整理する作業を同時並行で進めます。

思考ツールを活用する環境を準備する

 「ロジックツリー」「KJ法」「QC 7つ道具」などの思考ツールは、作業効率の向上に有効です。まだ、思考ツールを利用したことがなければ、試してみることを勧めます。プロジェクトは限られた期間で行うものです。時間を有効に使うための工夫はできる限りすべきです。リーダーあるいはいまいるメンバーが思考ツールを実践し、効果を出して見せれば、今後参入するメンバーにもツールを活用する気にさせ、チームの実力向上につながります。もちろん、ツールは効率だけでなく効果(結果)にもつながります。

 思考ツールは、頭の中で考えていることを、目の前に並べて、整理し、さらに考えを進めることができるように考えられたものです。思考ツールを使えば、頭の中で同じことを何回も繰り返して考えることを防ぎ、1つの考えに固執せずに違うアプローチを取ったり、レンジ外から攻めてみたりと多様な考え方ができるといったメリットがあります。また、主張に整合性や一貫性を与えます。重大事項が検討から漏れることを防ぎ、時には決定的なひらめきをもたらすこともあります。

 このようにいわれている一方で、思考ツールは名前が知られているほどには使われていません。現実には自分が頭の中で考えていることを、自分に見せるために手間を掛けることは無駄のようにも思えます。速い頭の働きを遅い手の動きに合わせてスピードダウンさせることも効率的ではないように感じるかもしれません。また、ツールを使うといっても、しょせんは自分の頭で考えることなので、打ち出の小づちのようにアイデアがわき出てくるとも思えません。

 そのため、ツールを使うことなく作業するわけですが、周りの人も皆、同様の理由でツールを使っていないので、ツールの有効性を評価する機会がありません。ニワトリかタマゴかの話ではありませんが、使われない本当の原因は「使ったことがないので効果が分からない」からなのです。

 作業効率向上のため、思考ツールを導入するには、まずリーダーをはじめとして、システム担当部署のメンバー自身が使うことです。思考ツールを使用して結果を出すには慣れたり、ツボを押さえるまでに若干の時間が必要です。業務部門からメンバーを迎え入れる前に、どのような思考ツールがあるのかも含めて学習し、実際に使ってみる価値はあります。使いやすいようにアレンジして構いません。

 思考ツールは表記法でもあるので、1人で物事を考えるときに有用なだけでなく、チームなど複数の人が集まって物事を考える場合に、一層威力を発揮します。自分の主張を相手に理解させるには、言葉だけよりも、整理された図を使って説明することが効果的です。

 部門横断的な大規模システムの開発では、部門間の衝突が発生します。その解決方法を探り、解決案を業務部門に説明・説得するのに思考ツールは効果的です。また、コストなどの制約からシステムでは解決できない場合の代替案を検討したり、要求仕様にすべての業務パターンが網羅されているか確認したりする場合にも有用です。

業務部門メンバーが来る前に行っておくべき準備

  • 作業基準やルール、資料や成果物のテンプレートを決め、サンプルを整備する
  • システムで使う用語の洗い出し・整理を行い、用語集作成に取り掛かる
  • プロジェクトで使えそうな思考ツールをチョイスし、実際に使ってみる


筆者プロフィール

山村 秀樹(やまむら ひでき)

某製造業において、主としてシステムの運用保守作業に従事している。仕事を通して、コンピュータ・システムに関心を持つようになり、中でもシステムの開発プロセスについて興味を感じている。

Elie_Worldを運営し、システムのライフサイクル全般にわたる作業について考えている。



前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ