社内用語を統一する「用語辞典」作成のポイントユーザーサイド・プロジェクト推進ガイド(17)(2/2 ページ)

» 2007年01月16日 12時00分 公開
[山村秀樹@IT]
前のページへ 1|2       

用語辞書に検討の軌跡を残す

 用語の抽出が終われば、それを分析、整理します。そして、同じ意味に対し複数の言葉があったり、同じ言葉で意味の違うものがあったりすれば、業務で使用する統一された言葉として、ふさわしいものを選択するか、新たに用語を作成します。もちろん、重複していない用語であっても、ふさわしい用語かどうかもチェックします。

 用語の検討は、用語辞書の上で行います。抽出した用語は、業務で使用する用語として、あるいは同意語として、すべて、かつ、速やかに用語辞書に入力します。用語辞書は、業務で使用する用語を統一し、方言がないようにするためなので、ダブリなくモレなく(MECE)であることが必要です。“ダブリなく”を注意することはリストアップされていれば可能ですが、“モレなく”を注意することは難易度が高く、困難です。用語を抽出したら、即用語辞書に入力したり、メモしたりするという習慣が重要です。

 検討の結果、採用されなかった用語は、用語辞書から物理的に削除するのではなく、取り消しマークと備考にその旨を記述しておくようにしておけば検討の過程が分かり、問い合わせや再調査があった場合に役立ちます。また、こうしておけば不採用と決めた用語を未検討の用語と誤って用語辞書に再アップするミスも防ぐことができます。

用語辞書を管理する仕組みが必要

 調査、検討で使用した用語辞書は、そのまま、成果物となります。これは、ユーザーサイド、ベンダサイドにかかわらず、プロジェクトにかかわる全員で共有します。

 この用語辞書は、プロジェクトの期間中、頻繁に更新されます(用語辞書は企業が活動する間、常にメンテナンスされます)。一度の調査ですべての用語を抽出できるわけではありません。モレや間違いの修正もありますが、プロジェクト作業が進むに従って、システムがカバーすべき範囲や、実装したい機能が増え、新たな用語が出現したり、作ったりする必要が出てくるからです。

 そのために、用語辞書を管理する必要があります。新たな用語を登録、承認する権限を誰が持つかなどのルールを決めて運用します。辞書に更新があれば、連絡する必要のある人に速やかに伝達できるよう、電子メールやCMSのような仕掛けで、工夫することも大切です。

 忘れてはならない重要なことは、用語辞書改訂の際に、その辞書のどの部分が前回から変更されているか、追加訂正個所にバージョン番号の付記と色付きの雲形枠で囲うなど、すぐに把握できるようにしておくことです。前回のバージョンとの差異が分からなければ、用語辞書の変更をプロジェクト作業に反映することができませんし、かといって差異を知るために新旧両方の用語辞書を比較する作業をすればかなりの時間を消費します。作成者・管理者は利用者の利便性を考慮に入れて情報共有の仕組みを構築する必要があります。

用語辞書の実現には工夫が必要

 使いにくく面倒な仕組みは、そのうち使われなくなります。これはシステムでもツールでも同じです。使い勝手の悪いシステムやツールは、作業から効率性を奪い、目的を達成できず、結局、その利用は時間を無駄にしているのに等しい場合すらあります。

 用語辞書はその作成だけでも大変な作業ですが、その内容をシステムに反映させることも大変な作業です。用語辞書の目的を実現するためには、その仕組み──つまり用語辞書に登録されていない用語が機能要求仕様書に使われていないかをチェックする機能や、有用性を高めるために登録内容を機能要求仕様書の作成に利用する仕組みなどに工夫を凝らすことも重要なポイントです。

 次回は、用語辞書の“工夫”の実例を紹介する予定です。

筆者プロフィール

山村 秀樹(やまむら ひでき)

某製造業において、主としてシステムの運用保守作業に従事している。仕事を通して、コンピュータ・システムに関心を持つようになり、中でもシステムの開発プロセスについて興味を感じている。

Elie_Worldを運営し、システムのライフサイクル全般にわたる作業について考えている。



前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ