3点セットの後に何をすればよいのかが分からないSOX法コンサルタントの憂い(8)(3/3 ページ)

» 2008年03月03日 12時00分 公開
[鈴木 英夫,@IT]
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ウォークスルーとは

 もともと、ウォークスルーとは:

1つの取引が始まるところから、一定の基準・要件を満たしていることの確認、稟議などの手続き、伝票の起票、システム入力、勘定科目への計上

といったことを、流れに沿って矛盾や抜け漏れがないかどうか、確認を行うことをいう。

 内部統制の有効性の評価では、主に設計面での評価を行うときに用いられる。従って、コントロールの設計面の評価を行うときに利用するウォークスルーは、幾つかのコントロールを縦串的に見ることになる。

有効性の評価結果から

 設計面および運用面での評価に問題がなければ、当該コントロールは「有効」だ。

 設計面か運用面いずれかに問題があれば、当該不備が財務報告全体に与える影響度を考慮し、単なる「不備」か「重要な欠陥」であるかを判断する。

 例えば、金額面での有効性の判断をする場合、その不備により利益額の5%以上の誤謬を起こす可能性があれば、重要な欠陥となる。

 「不備」も「重要な欠陥」も、企業としては是正する必要があるが、「重要な欠陥」の場合には、内部統制報告書に「財務報告にかかわる内部統制は有効ではない」を、さらに「その欠陥の内容およびそれが是正されない理由」も記載しなければならない。

 それに加えて、この報告書は有価証券報告書と共に公表されるので、影響は極めて大きく、株価の下落などを覚悟しなければならない。

 有効性の評価は、記録し保存する必要がある。有効性の評価を記録するときに用いられる「テスト記述書」については、本連載第5回を参照していただきたい。

内部統制の欠陥の是正

 コントロールの有効性の評価の過程で発見された「不備」または「重要な欠陥」は、速やかに経営者に報告され、是正のための措置が取られる必要がある。

 左記で述べたとおり、「重要な欠陥」が発見された場合でも、それが報告書における評価時点(期末)までに是正されていれば、「財務報告にかかわる内部統制は有効である」と認めることができる。

 従って、有効性の評価は早ければ早いほどよい。遅くとも年度の第4四半期の初めの月(3月決算の会社では、2009年1月)までに行うことが好ましい。そうすれば、是正と是正されたコントロールを評価する時間的余地が残る。参考までに、多くの企業では、内部統制の評価を「2008年の夏までに完了する予定」としていることを付け加えておこう。

Profile

鈴木 英夫(すずき ひでお)

慶應義塾大学経済学部卒業、外資系製薬会社で広報室長・内部監査室長などを務める。

2004年から、同社のSOX法対応プロジェクトコーディネータ。現在は、フリーのSOX法・日本版SOX法コンサルタント。プランナー・オブ・リスクマネジメント、内部監査士。神戸商工会議所登録エキスパート。

著書:「図解日本版SOX法」(同友館、共著)

近著:「日本版SOX法実践コーチ」(同友館、共著)

連絡先: ai-risk330@jttk.zaq.ne.jp

Webサイト:http://spinel3.myftp.org/hideo/ai-risk.htm


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